【なぜ、たった一冊の本が人の人生を変えてしまうのだろう】
本を読んだことで、仕事を変えた人がいる。生き方を変えた人がいる。絶望のなかから立ち上がった人がいる。そして、ときには本人さえ想像していなかった人生へと歩きはじめる人がいる。
本書の著者・高橋朋宏さんも、その一人である。サンマーク出版の編集者として、近藤麻理恵さんの『人生がときめく片づけの魔法』をはじめ、世界へ広がるベストセラーを手がけてきた。しかし、その編集者人生は決して順風満帆ではなかった。雑誌編集長として創刊した雑誌が休刊し、会社に「ウン億円」の損害を与え、自信もプライドも粉々になった。そんな失意のなかで出会ったのが、
「本はエネルギーである」「ベストセラーとは、エネルギーの伝播現象である」
という言葉だった。以来、数えきれないほどの本と著者に向き合い、自らも本によって人生を変えられてきた高橋さんは、ひとつの確信にたどり着く。
本は、ただ情報や知識を得るためのものではない。本を読むことで、人は「まだ知らない自分」と出会うことができる。
だから、本はただ読むだけでもいい。内容をすべて理解する必要も、覚えておく必要もない。一冊読むごとに、自分のなかの何かが一ミリずつ変わっていく。
そして、その変化を大きくするのが、読書中に浮かんでくる「雑念」である。仕事のことを思い出す。昔の記憶がよみがえる。「自分はこのままでいいのだろうか」と考える。それは読書を邪魔するノイズではない。本の言葉と自分の人生がぶつかった瞬間に生まれる「着想のカケラ」なのだ。
そのカケラを拾っていくと、やがて「問い」が立ち上がる。問いをもって本を読むと、何気ない一行が突然、自分に向かって語りはじめ、本に書かれていないことまで見えてくる。
そして、本の力が本当に現れるのは、読み終わったあとである。本が人生に効くのは、本を閉じたあとなのだ。
何年も前に読んだ言葉が突然よみがえり、一冊の本から受け取ったものが自分の「ものさし」となって、判断を変え、行動を変えていく。読んだ本の意味は、読んだ日に決まるわけではない。
「運命の本」とは、未来を教えてくれる魔法の本ではない。自分のなかに眠っていた可能性を呼び覚まし、自分でも想像していなかった未来へ歩き出させてくれる本だ。
本とは、その本を必要としている誰かのために、誰かが人生の時間を使い、本気で書いたものだ。著者の経験、思考、感情、人生そのものが言葉となり、時代も場所も超えて、まだ会ったことのない誰かへ手渡されていく。
本を読み続けていれば、いつか必ず「運命の本」と出会う。
本書は、世界的ベストセラーを生み出してきた一人の編集者が、自らの挫折と読書体験、本づくりの現場から、「本にはなぜ人生を変える力があるのか」を解き明かす一冊である。