目 次
Ⅰ 鎮静の実践で知っておきたい知識〈今井堅吾〉
1.用語の整理
A.鎮静の定義:あいまいさのある「医師の意図」が外された
B.鎮静の分類:持続的鎮静の新たな分類が提示された
C.治療抵抗性の苦痛:利用できる緩和ケアによって患者ごとに異なる
2.鎮静の手引きの要点:フローチャートに沿って考え方を整理する
A.対象:余命が厳しいがん患者の耐えがたい治療抵抗性の苦痛
B.相応性:その人にとっての最善について判断する
C.患者の意思をできる限り尊重する
D.苦痛に対する緩和ケアを見直し,必要に応じ間欠的鎮静を行う
E.鎮静を行う意図は苦痛緩和であることを共有し,医療チームで総合的に判断する
F.鎮静薬の投与:調節型鎮静をまず検討し,困難なら持続的深い鎮静を行う
3.鎮静薬の特徴と使い方:知っておきたい現場感覚
A.鎮静薬:ミダゾラムが主に使用される
B.ミダゾラムの特徴:作用時間が短く調節しやすいが,個体や病態の影響を大きく受ける
C.ミダゾラムの血中薬物動態:手元の投与速度と血中濃度はパラレルではない
4.意思決定の考え方(患者・家族とのコミュニケーションの取り方)
A.事前の意思確認:一律に実施せずその患者に必要かを個別に判断する
B.総合的に意思決定能力を判断し,不完全な意思決定能力であっても本人の意思が尊重されるよう配慮する
C.推定意思:家族の同意や希望を優先するのではなく,本人の意思の推定を目指す
D.推定意思が不明ならプロセスガイドラインに沿い,意思能力法を参考に最善を判断する
Ⅱ Practical Tips―どう考えればいいのか?〈今井堅吾〉
1 .薬物療法
オピオイドの増量で鎮静するという考え
Q1 持続投与しているモルヒネ注射薬を増量して鎮静するのはだめなのですか?
コラム01 クロルプロマジンは鎮静か?〈森田達也〉
ミダゾラムが効かない時
Q2 鎮静を開始してもつらさが取れずミダゾラムを増量してみましたが効果がありません.
鎮静開始後の薬物療法の評価
Q3 鎮静開始後に鎮静薬の量を調整するには,何をどのように
評価したら良いですか? 「眠れている」だけではだめですか?
鎮静開始後の薬物療法の評価~Q3 Advanced編 もう少し知りたい人へ~
コラム02 「○○さん!! たけし,捕まったんだって!!」と深い鎮静中の患者さんを起こした件〈森田達也〉
2 .鎮静の適応の判断
治療抵抗性の判断
Q4 治療抵抗性なのかがわからず,鎮静に踏み切れません.どうしたら良いですか?
コラム03 いつ起きますか?〈森田達也〉
耐えがたい苦痛の判断は本人の訴えだけで良いか
Q5 本人は「苦痛がつらいから眠らせてほしい」と訴えています.しかしスタッフからみると,苦痛はある程度緩和されているように思えます.耐えがたい苦痛かどうかの判断には,本人の訴え以外に客観的な指標も必要でしょうか?
非がん患者への鎮静
Q6 非がん患者の終末期に苦しそうな場合は鎮静の適応となりますか?
適正な鎮静薬の使用頻度
Q7 私が勤務している病院では全く鎮静を行うことはないのですが,
本当は実施すべきなのでしょうか?
「老舗ホスピスでの実践の違いから,苦痛緩和と鎮静の本質について考える」
~Q7 Advanced編 もう少し知りたい人へ~
3 .患者・家族とのコミュニケーション
状態が悪く鎮静薬の使用直後に息が止まりそうで心配
Q8 全身状態がとても悪い患者さんに鎮静薬を投与すると,そのまま息が止まってしまうのではないかと心配です.鎮静について家族へどのように説明すれば良いでしょうか?
詳細な説明が難しい場合
Q9 鎮静について説明しようとすると,意識が下がることや死を 連想させるような内容を含むため,特に本人には説明しづらい のですが,実際には最低限どこまで伝えれば良いのでしょうか?
家族の満足度が低そうな様子
Q10 家族はスタッフに何も言ってこないのですが,鎮静中の付き添いの様子から何か不満があるのではないかと感じます.家族の満足度を上げるにはどのように対応したら良いですか?
コラム04 あいまいな喪失:完全に失うよりもつらい〈今井堅吾〉
家族が鎮静に反対する場合
Q11 患者に耐えがたい苦痛があり,本人は鎮静を希望しています.
医療チームも鎮静が適応と判断しましたが,家族が「眠らせる必要はない」と反対しています.どのようにすれば,患者本人と家族の双方が納得できる形に近づけるでしょうか?
4 .医療者間のコミュニケーション
鎮静に対して医師が乗り気でない場合
Q12 患者がとても苦しそうなのに,主治医が何もしない場合はどうしたらよいでしょうか?
コラム05 鎮静をめぐって家族と最悪の関係になった件〈森田達也〉
コラム06 もうおじいさんは準備できてます! と,先生がそんなこと書くとあきらめちゃうじゃないですか!〈森田達也〉
医療者自身のケアをどうするか
Q13 終末期鎮静を考慮するような治療抵抗性の苦痛があり,患者が耐えがたい苦痛で苦しんでいる場面では,医療スタッフには大きな精神的負担がかかります.私たち医療現場で,自分を含めたスタッフのケアはどのようにしたらよいでしょうか?197
Ⅲ 苦痛緩和のための鎮静の法的な問題―実践編
〈森田達也〉
はじめに
Q1 「法的な問題」とは何か?
刑事訴訟と民事訴訟の違い
Q2 鎮静後に患者が死亡しても刑法上問題にならない要件
間接的安楽死という概念
間接的安楽死の4つの要件
「間接的安楽死」と言わないほうがいいのでは? の意見
Q3 安楽死との違い
鎮静直後に患者が死亡した場合の安楽死との違い
Q4 「終末期」とはどれくらいの時期か?
「死が迫っている」の具体的な範囲
「死が迫っている」に幅を持たせる臨床の工夫
Q5 精神的苦痛に対する鎮静
純粋な精神的苦痛に対する鎮静の是非―間接的安楽死の観点から
身体的苦痛と精神的苦痛とがある場合
Q6 患者の意識が明瞭な時に求められる説明
法学上求められるインフォームドコンセントと患者の意思
現実的な説明の考え方―<もしこれを聞いていたなら違う選択をるかもしれないことは説明する>
すべての説明を画一的にしなくてもいいと考える場合の説明の仕方
Q7 患者の意識があいまいな時の推定意思
推定意思―がっちりした推定意思から軽めの推定意思
意思を推定する方策がまったくない場合―最善の利益
(ベストインタレスト)
意思を推定する・同意を行う家族に相当するものがいない場合
Q8 文章同意の法的位置づけ
文書同意の法的な意味
あらかじめの事前の文書同意の意味
Q9 家族が反対する場合
家族の意向の法的な位置づけ
法律の問題にせずに臨床でできる工夫
Q10 添付文書の法的位置づけ
まとめ
あとがき―鎮静とのつきあいの個人史〈森田達也〉
索引