- 発売日:2026/07/23
- 出版社:南江堂
- ISBN:9784524210749
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商品説明
罹患数の減少を背景として,胃癌診療は大きな転換期を迎えている.とくに早期胃癌においては,経験症例数が限られる状況でその病態を的確に捉え,多様な治療選択肢に対応する力が求められる.本書は,基礎・診断・内視鏡治療・外科治療にいたる早期胃癌の高度な診断・治療体系の全容を一冊に網羅.最新のガイドラインおよび取扱い規約等の内容も踏まえ,基礎研究に立脚し確立された診療哲学と技術体系を後世に継承する.内科・外科の枠を超えて第一線の医師がエビデンスと経験,情熱を結集した集大成である.
目次
【序文】
ありがとう早期胃癌,僕らは君を忘れない.
かつて「胃癌」は,日本人のがん罹患・がん死のトップでした.その克服は消化器癌を扱う医師にとって最重要の課題であり,胃癌の診療は戦後日本で長足の進歩を遂げました.がん死を制御するカギは早期発見・早期治療です.早期胃癌の診断と治療は重要なテーマでした.
還暦を過ぎた私が外科医のキャリアをスタートしたころ,胃癌はがん外科手術で最も多い疾患でした.当時の「エルステマーゲン」は,駆け出し外科医の目標であり登竜門であり入門許可証でありました.また当時は,上部消化管内視鏡が「覗きのファイバースコープ」から「ブラウン管の電子内視鏡」に進化したての頃です.私のキャリアは,胃透視と胃内視鏡を教えていただき,自分で手術するためにたくさん検査して「早期胃癌」を探す日々からスタートしました.その後私は,恩師の三輪晃一先生(金沢大学教授)に厳しく鍛えていただき,胃癌を専門とする研究者になりました.幸せなことに,早期胃癌をめぐる診断・治療は20世紀末にドラスティックに変化し,発奮する日々でした.
今日,胃癌は日本から消えつつある疾患です.外科医が扱う胃癌症例は減少し高齢化しています.これは,住環境の改善,Helicobacter pylori保菌率の低下,除菌治療に携わった皆様の不断の努力,内視鏡検診の普及など,多くの要因と現場の努力の結晶で,大変喜ばしいことです.私の引退とともに,早期胃癌も消えていくのであろうなあ,と,感傷でもあります.
ただ危惧する点もございます.今後も日本人の胃癌罹患は加速度的に減少し,胃癌の臨床は様変わりします.進行胃癌の治療は集約化され高度化してなくなることはないでしょうが,早期胃癌に対する高度な診断・治療体系は,症例の激減とともに喪失するのではないでしょうか?
臨床医学における診断・治療体系は,たとえ高度に発展していても,遭遇機会が減少すれば容易に失われます.特にニッチな治療手技は,優れているにもかかわらず,顧みられることなく埋没します.
かつて消化性潰瘍に対し,「迷走神経切離術」という外科治療が施行されておりました.潰瘍を再発させず,かつ食生活を毀損しない治療を行うにはどうすべきか,数多くの解剖学的知見と酸分泌機能検査をもとに様々な術式が開発され,それらを結びつける高度な治療体系が構築されておりました.しかし,消化性潰瘍の病態の真実が判明し,外科治療が激減するとともに,その治療体系はすべて失われました.今日では,迷走神経切離術を調べようにも,断片的な情報しか得られません.
その際に重要なのは,単行本だと思います.
迷走神経切離術をめぐる治療体系は,1988年に発刊された単行本『Vagotomy─基礎と臨床』にすべてまとめられています.後世のわれわれは,この単行本を紐解くことによって,当時の外科医たちがどのような哲学と基礎的検討に立脚して外科治療を構築したかを,中立的な立場から窺い知ることができます.
本書は,早期胃癌がまだ多く,高度な治療体系が失われていない今日のうちに,基礎・診断・治療法から術後機能評価・予防に至るまでの「早期胃癌の臨床のすべて」を,治療体系として後世に残すことを目的に編纂いたしました.嬉しいことに,ともに胃癌に立ち向かってきた戦友たちの賛同と監修・共同編集のもと,斯界の第一人者の皆様のお力添えをいただけました.なるべく私より若い人に書いてもらおう,という無茶振りにもかかわらず,すべての先生から渾身の玉稿を拝領でき,手前味噌ではありますが,今後数十年に渡って通用するバイブルになったものと自負しております.
本書は,多くの皆様のご尽力で出版に漕ぎつけることができました.執筆の先生方,監修・編集の同志の皆様に加え,私を厳しく指導してくださった恩師や諸先輩方,趣旨に賛同いただけた南江堂の皆様に,心より感謝申しあげます.
そして何より,早期胃癌に,ありがとう.君は狂暴で仇敵だが,正体不明で謎だらけ,鵺で小悪魔で,ちょっとチャーミングだった.消えゆく君のことは,忘れないよ.
2026年4月
金沢医科大学氷見市民病院 一般・消化器外科
木南伸一
【目次】
Ⅰ. 早期胃癌の診断・治療の歴史
❶ 早期胃癌の定義―その発見と定義・概念
❷ 早期胃癌の診断技術の発展―胃X線検査・内視鏡検査・その他の診断法
❸ 早期胃癌の治療技術の発展―開腹手術・内視鏡切除・腹腔鏡手術・ロボット支援下手術
Ⅱ.基礎編1 胃の解剖・生理
❶ 胃の解剖―位置・組織学・粘膜・筋層
❷ 胃の血管系と変異
COLUMN 幽門下動静脈
❸ 胃のリンパ流・所属リンパ節
❹ 胃周囲の間膜・膜構造・網嚢
❺ 胃の神経系
COLUMN 胃癌取扱い規約・胃癌治療ガイドラインの改訂点
❻ 内視鏡治療からみた胃の解剖―剝離層と壁内血管網を中心に
❼ 外科治療からみた胃の解剖―剝離可能層とメルクマール
❽ 食道胃接合部をめぐる解剖
❾ 胃の運動機能
a.非切除胃の運動―調節機構と他臓器との連関
b.幽門側胃切除・噴門側胃切除後の残胃運動
c.幽門保存胃切除・胃分節切除・胃局所切除後の残胃運動
❿ 胃の分泌機能・消化管ホルモン
⓫ 胃の区分
COLUMN 迷走神経腹腔枝温存リンパ節郭清術をめぐる話題
Ⅲ.基礎編2 早期胃癌の病理診断と病態
❶ 早期胃癌の病理組織分類とその性質
❷ 狙撃胃生検の病理診断と留意点
❸ 早期胃癌の内視鏡切除標本の病理標本作成と病理診断
❹ 早期胃癌の外科手術標本の取り扱いおよび術中迅速診断の正診率
❺ 早期胃癌のリンパ節転移―頻度,分布,定型的郭清の治療成績
❻ 早期胃癌の遠隔転移―頻度,特徴,治療成績
❼ 同時性・異時性多発胃癌
Ⅳ.基礎編3 胃発癌・分子生物学
❶ Helicobacter pylori感染と胃発癌
COLUMN Helicobacter pylori関連慢性萎縮性胃炎の進展過程
❷ 除菌治療の胃発癌への影響
❸ 胃発癌の分子生物学
❹ 胃発癌とEpstein-Barr virus(EBウイルス)感染
❺ 胃発癌に関与する危険因子
❻ 早期胃癌の組織型と背景粘膜・好発部位
❼ リンパ節転移・遠隔転移成立にいたる分子生物学
❽ 早期胃癌の自然史―治療しないとどうなる?
Ⅴ.診断編1 胃X線検査
❶ 胃X線検査の基礎とその理論
❷ 胃X線検査の利点と欠点―特に禁忌症例と有害事象に関して
❸ 精密胃X線検査の撮影
❹ 精密胃X線検査の読影
❺ 胃X線診断の弱点と克服法
❻ 胃癌X線検診の実際とその成績
Ⅵ.診断編2 内視鏡診断
❶ 上部消化管内視鏡機種の種類―特徴と適応
❷ 上部消化管内視鏡診断の画像強調技術―色素撒布と狭帯域光観察
❸ 上部消化管内視鏡の精密観察―拡大内視鏡と顕微内視鏡
COLUMN 病理学と組織学
❹ 超音波内視鏡による深達度診断
❺ スクリーニング内視鏡による早期胃癌の拾い上げ診断―好発部位と留意点
❻ 除菌後症例における早期胃癌の拾い上げ診断と留意点
❼ 精査内視鏡検査による早期胃癌の壁深達度診断と範囲診断
COLUMN 道端にひっそりと咲く名もなき小さな白い花,それがWGA
❽ Helicobacter pylori未感染胃癌と胃底腺型胃癌の概要と特徴
❾ 早期胃癌内視鏡診断における人工知能の役割
❿ 内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)後症例における異時性多発胃癌の診断
⓫ 残胃に発生する早期の新生癌・異時性多発癌の内視鏡診断
Ⅶ.診断編3 その他の診断法,検診での診断
❶ 術前におけるリンパ節転移診断
❷ 住民検診・職域検診における早期胃癌診断の種類と特徴
COLUMN 早期胃癌診断における採血マーカー・miRNA
Ⅷ.内視鏡治療編
❶ 早期胃癌に対する内視鏡治療の歴史
❷ 内視鏡治療に使用する高周波電気メス装置の種類・設定と特徴
❸ 内視鏡による粘膜切除の種類と概要―内視鏡的粘膜切開術(EMR)・内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)とそのバリエーション
❹ 内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)に使用する専用メスの種類と特徴
❺ 内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)の実践1―コツとピットフォール
❻ 内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)の実践2―切除困難例とその対策
❼ 内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)の実践3―出血と穿孔への対応
❽ 内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)の出血・穿孔以外の偶発症・合併症とその対処法
❾ 内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)におけるカウンタートラクションの手技と成績
❿ 内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)の麻酔法と周術期管理
⓫ 内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)の適応と治療成績
⓬ 内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)後にeCuraCと判定された症例への追加治療と経過観察
⓭ 内視鏡的胃全層切除術(EFTR)
⓮ 内視鏡的な粘膜切除以外の早期胃癌に対する内視鏡治療の種類と治療成績 ―アルゴンプラズマ凝固(APC)焼灼治療・光線力学療法(PDT)
Ⅸ.外科治療編1 外科治療の基礎
❶ 早期胃癌外科治療の歴史
COLUMN 胃癌に対する胃切除術を日本で初めて施行した医師は誰か
❷ リンパ節郭清の基礎と郭清範囲の理論的背景
❸ 早期胃癌に対する郭清すべきリンパ節の範囲
❹ 早期胃癌に対するガイドライン手術とその治療成績
COLUMN 早期胃癌手術における 11p 12a 14v 郭清の必要性
❺ センチネルリンパ節生検の理論的背景と診断成績
❻ 早期胃癌に対するセンチネルリンパ節生検の実際
❼ センチネルリンパ節生検の臨床応用とその治療成績
❽ 早期胃癌縮小手術と機能温存手術
❾ 早期胃癌手術における自律神経系温存の理論と成績
❿ 胃切除後の機能再建術式―幽門側胃切除後ダブルトラクト再建・幽門再建術ほか
COLUMN 胃外科の歩みを振り返って
⓫ 早期胃癌に対する機能再建術式としてのパウチ再建法
COLUMN 手術から学んだこと,そして未来へ
⓬ 早期胃癌外科治療に必要な腹腔鏡・ロボットの基礎知識
⓭ 早期胃癌外科治療における術式の選択
Ⅹ.外科治療編2 早期胃癌に対する標準手術
❶ 早期胃癌に対する手術と実臨床
❷ 早期胃癌に対するロボット支援下手術および開腹手術の位置づけ
❸ 早期胃癌に対する開腹リンパ節郭清の実際
❹ 腹腔鏡下幽門側胃切除D1+の実践1―⑥郭清の標準的手技とバリエーション
❺ 腹腔鏡下幽門側胃切除D1+の実践2―膵上縁リンパ節郭清の標準的手技
❻ 腹腔鏡下幽門側胃切除D1+の実践3― 1 ~ 3a 郭清の標準的手技
❼ 腹腔鏡下幽門側胃切除D1+の実践4― 4sb ~ 4d および⑤郭清の標準的手技とピットフォール
❽ 腹腔鏡下幽門側胃切除の実践―十二指腸切離と胃切離
❾ 腹腔鏡下胃全摘D1+の実践1―胃脾間膜切離と②郭清
❿ 腹腔鏡下胃全摘D1+の実践2―食道切離と食道空腸吻合法
⓫ ロボット支援下胃切除における腹腔鏡下胃切除術との差異と留意点
⓬ 早期胃癌腹腔鏡手術におけるreduced port surgery
⓭ 腹腔鏡下幽門側胃切除後のBillrothⅠ法再建―その実際とバリエーション
⓮ 腹腔鏡下幽門側胃切除後のRoux-en-Y法再建―その実際とバリエーション
⓯ 腹腔鏡下幽門側胃切除後のBillrothⅡ法再建―その理由と利点・欠点
⓰ 腹腔鏡下胃全摘後のRoux-en-Y法再建―その実際とバリエーション
⓱ 腹腔鏡下胃全摘後のRoux-en-Y法以外の再建法
⓲ ロボット支援下胃切除における消化管再建の実際と留意点
Ⅺ.外科治療編3 早期胃癌に対する機能温存・機能再建手術
❶ 幽門保存胃切除術の適応と治療成績
❷ 幽門保存胃切除術の実践1―郭清範囲の縮小と神経・血管温存の実際
❸ 幽門保存胃切除術の実践2―胃胃吻合法とそのバリエーション
❹ 噴門側胃切除術の適応と治療成績
❺ 噴門側胃切除術の実践1―胃の切除範囲とそのデザイン
❻ 噴門側胃切除術の実践2―食道残胃吻合のバリエーションとその成績
❼ 噴門側胃切除術の実践3―逆流防止機構の実際
❽ 噴門側胃切除術の実践4―ダブルトラクト再建法
❾ 胃分節切除術の適応と治療成績
❿ 外科的胃局所切除術の適応と治療成績
⓫ 早期胃癌に対するLECS
COLUMN Sealed EFTR
Ⅻ.外科治療編4 術後合併症・後遺症・術後障害・機能評価
❶ 胃切除後の術後管理とクリニカルパス
❷ 胃切除後の周術期合併症
❸ 胃切除後の後遺症とその対策
❹ 胃切除後障害の種類
❺ 胃切除後障害とQOL評価法
❻ 胃・残胃の機能評価検査法の種類と成績
❼ 幽門保存胃切除後・胃分節切除後に特有な術後障害・後遺症とその対策
❽ 噴門側胃切除後に特有な術後障害・後遺症とその対策 1
❾ 胃局所切除後に特有な術後障害・後遺症とその対策
❿ 胃切除後症例への栄養指導
⓫ 早期胃癌術後症例に対する化学療法の是非
⓬ 早期胃癌治療後のfollow up法
ありがとう早期胃癌,僕らは君を忘れない.
かつて「胃癌」は,日本人のがん罹患・がん死のトップでした.その克服は消化器癌を扱う医師にとって最重要の課題であり,胃癌の診療は戦後日本で長足の進歩を遂げました.がん死を制御するカギは早期発見・早期治療です.早期胃癌の診断と治療は重要なテーマでした.
還暦を過ぎた私が外科医のキャリアをスタートしたころ,胃癌はがん外科手術で最も多い疾患でした.当時の「エルステマーゲン」は,駆け出し外科医の目標であり登竜門であり入門許可証でありました.また当時は,上部消化管内視鏡が「覗きのファイバースコープ」から「ブラウン管の電子内視鏡」に進化したての頃です.私のキャリアは,胃透視と胃内視鏡を教えていただき,自分で手術するためにたくさん検査して「早期胃癌」を探す日々からスタートしました.その後私は,恩師の三輪晃一先生(金沢大学教授)に厳しく鍛えていただき,胃癌を専門とする研究者になりました.幸せなことに,早期胃癌をめぐる診断・治療は20世紀末にドラスティックに変化し,発奮する日々でした.
今日,胃癌は日本から消えつつある疾患です.外科医が扱う胃癌症例は減少し高齢化しています.これは,住環境の改善,Helicobacter pylori保菌率の低下,除菌治療に携わった皆様の不断の努力,内視鏡検診の普及など,多くの要因と現場の努力の結晶で,大変喜ばしいことです.私の引退とともに,早期胃癌も消えていくのであろうなあ,と,感傷でもあります.
ただ危惧する点もございます.今後も日本人の胃癌罹患は加速度的に減少し,胃癌の臨床は様変わりします.進行胃癌の治療は集約化され高度化してなくなることはないでしょうが,早期胃癌に対する高度な診断・治療体系は,症例の激減とともに喪失するのではないでしょうか?
臨床医学における診断・治療体系は,たとえ高度に発展していても,遭遇機会が減少すれば容易に失われます.特にニッチな治療手技は,優れているにもかかわらず,顧みられることなく埋没します.
かつて消化性潰瘍に対し,「迷走神経切離術」という外科治療が施行されておりました.潰瘍を再発させず,かつ食生活を毀損しない治療を行うにはどうすべきか,数多くの解剖学的知見と酸分泌機能検査をもとに様々な術式が開発され,それらを結びつける高度な治療体系が構築されておりました.しかし,消化性潰瘍の病態の真実が判明し,外科治療が激減するとともに,その治療体系はすべて失われました.今日では,迷走神経切離術を調べようにも,断片的な情報しか得られません.
その際に重要なのは,単行本だと思います.
迷走神経切離術をめぐる治療体系は,1988年に発刊された単行本『Vagotomy─基礎と臨床』にすべてまとめられています.後世のわれわれは,この単行本を紐解くことによって,当時の外科医たちがどのような哲学と基礎的検討に立脚して外科治療を構築したかを,中立的な立場から窺い知ることができます.
本書は,早期胃癌がまだ多く,高度な治療体系が失われていない今日のうちに,基礎・診断・治療法から術後機能評価・予防に至るまでの「早期胃癌の臨床のすべて」を,治療体系として後世に残すことを目的に編纂いたしました.嬉しいことに,ともに胃癌に立ち向かってきた戦友たちの賛同と監修・共同編集のもと,斯界の第一人者の皆様のお力添えをいただけました.なるべく私より若い人に書いてもらおう,という無茶振りにもかかわらず,すべての先生から渾身の玉稿を拝領でき,手前味噌ではありますが,今後数十年に渡って通用するバイブルになったものと自負しております.
本書は,多くの皆様のご尽力で出版に漕ぎつけることができました.執筆の先生方,監修・編集の同志の皆様に加え,私を厳しく指導してくださった恩師や諸先輩方,趣旨に賛同いただけた南江堂の皆様に,心より感謝申しあげます.
そして何より,早期胃癌に,ありがとう.君は狂暴で仇敵だが,正体不明で謎だらけ,鵺で小悪魔で,ちょっとチャーミングだった.消えゆく君のことは,忘れないよ.
2026年4月
金沢医科大学氷見市民病院 一般・消化器外科
木南伸一
【目次】
Ⅰ. 早期胃癌の診断・治療の歴史
❶ 早期胃癌の定義―その発見と定義・概念
❷ 早期胃癌の診断技術の発展―胃X線検査・内視鏡検査・その他の診断法
❸ 早期胃癌の治療技術の発展―開腹手術・内視鏡切除・腹腔鏡手術・ロボット支援下手術
Ⅱ.基礎編1 胃の解剖・生理
❶ 胃の解剖―位置・組織学・粘膜・筋層
❷ 胃の血管系と変異
COLUMN 幽門下動静脈
❸ 胃のリンパ流・所属リンパ節
❹ 胃周囲の間膜・膜構造・網嚢
❺ 胃の神経系
COLUMN 胃癌取扱い規約・胃癌治療ガイドラインの改訂点
❻ 内視鏡治療からみた胃の解剖―剝離層と壁内血管網を中心に
❼ 外科治療からみた胃の解剖―剝離可能層とメルクマール
❽ 食道胃接合部をめぐる解剖
❾ 胃の運動機能
a.非切除胃の運動―調節機構と他臓器との連関
b.幽門側胃切除・噴門側胃切除後の残胃運動
c.幽門保存胃切除・胃分節切除・胃局所切除後の残胃運動
❿ 胃の分泌機能・消化管ホルモン
⓫ 胃の区分
COLUMN 迷走神経腹腔枝温存リンパ節郭清術をめぐる話題
Ⅲ.基礎編2 早期胃癌の病理診断と病態
❶ 早期胃癌の病理組織分類とその性質
❷ 狙撃胃生検の病理診断と留意点
❸ 早期胃癌の内視鏡切除標本の病理標本作成と病理診断
❹ 早期胃癌の外科手術標本の取り扱いおよび術中迅速診断の正診率
❺ 早期胃癌のリンパ節転移―頻度,分布,定型的郭清の治療成績
❻ 早期胃癌の遠隔転移―頻度,特徴,治療成績
❼ 同時性・異時性多発胃癌
Ⅳ.基礎編3 胃発癌・分子生物学
❶ Helicobacter pylori感染と胃発癌
COLUMN Helicobacter pylori関連慢性萎縮性胃炎の進展過程
❷ 除菌治療の胃発癌への影響
❸ 胃発癌の分子生物学
❹ 胃発癌とEpstein-Barr virus(EBウイルス)感染
❺ 胃発癌に関与する危険因子
❻ 早期胃癌の組織型と背景粘膜・好発部位
❼ リンパ節転移・遠隔転移成立にいたる分子生物学
❽ 早期胃癌の自然史―治療しないとどうなる?
Ⅴ.診断編1 胃X線検査
❶ 胃X線検査の基礎とその理論
❷ 胃X線検査の利点と欠点―特に禁忌症例と有害事象に関して
❸ 精密胃X線検査の撮影
❹ 精密胃X線検査の読影
❺ 胃X線診断の弱点と克服法
❻ 胃癌X線検診の実際とその成績
Ⅵ.診断編2 内視鏡診断
❶ 上部消化管内視鏡機種の種類―特徴と適応
❷ 上部消化管内視鏡診断の画像強調技術―色素撒布と狭帯域光観察
❸ 上部消化管内視鏡の精密観察―拡大内視鏡と顕微内視鏡
COLUMN 病理学と組織学
❹ 超音波内視鏡による深達度診断
❺ スクリーニング内視鏡による早期胃癌の拾い上げ診断―好発部位と留意点
❻ 除菌後症例における早期胃癌の拾い上げ診断と留意点
❼ 精査内視鏡検査による早期胃癌の壁深達度診断と範囲診断
COLUMN 道端にひっそりと咲く名もなき小さな白い花,それがWGA
❽ Helicobacter pylori未感染胃癌と胃底腺型胃癌の概要と特徴
❾ 早期胃癌内視鏡診断における人工知能の役割
❿ 内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)後症例における異時性多発胃癌の診断
⓫ 残胃に発生する早期の新生癌・異時性多発癌の内視鏡診断
Ⅶ.診断編3 その他の診断法,検診での診断
❶ 術前におけるリンパ節転移診断
❷ 住民検診・職域検診における早期胃癌診断の種類と特徴
COLUMN 早期胃癌診断における採血マーカー・miRNA
Ⅷ.内視鏡治療編
❶ 早期胃癌に対する内視鏡治療の歴史
❷ 内視鏡治療に使用する高周波電気メス装置の種類・設定と特徴
❸ 内視鏡による粘膜切除の種類と概要―内視鏡的粘膜切開術(EMR)・内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)とそのバリエーション
❹ 内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)に使用する専用メスの種類と特徴
❺ 内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)の実践1―コツとピットフォール
❻ 内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)の実践2―切除困難例とその対策
❼ 内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)の実践3―出血と穿孔への対応
❽ 内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)の出血・穿孔以外の偶発症・合併症とその対処法
❾ 内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)におけるカウンタートラクションの手技と成績
❿ 内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)の麻酔法と周術期管理
⓫ 内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)の適応と治療成績
⓬ 内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)後にeCuraCと判定された症例への追加治療と経過観察
⓭ 内視鏡的胃全層切除術(EFTR)
⓮ 内視鏡的な粘膜切除以外の早期胃癌に対する内視鏡治療の種類と治療成績 ―アルゴンプラズマ凝固(APC)焼灼治療・光線力学療法(PDT)
Ⅸ.外科治療編1 外科治療の基礎
❶ 早期胃癌外科治療の歴史
COLUMN 胃癌に対する胃切除術を日本で初めて施行した医師は誰か
❷ リンパ節郭清の基礎と郭清範囲の理論的背景
❸ 早期胃癌に対する郭清すべきリンパ節の範囲
❹ 早期胃癌に対するガイドライン手術とその治療成績
COLUMN 早期胃癌手術における 11p 12a 14v 郭清の必要性
❺ センチネルリンパ節生検の理論的背景と診断成績
❻ 早期胃癌に対するセンチネルリンパ節生検の実際
❼ センチネルリンパ節生検の臨床応用とその治療成績
❽ 早期胃癌縮小手術と機能温存手術
❾ 早期胃癌手術における自律神経系温存の理論と成績
❿ 胃切除後の機能再建術式―幽門側胃切除後ダブルトラクト再建・幽門再建術ほか
COLUMN 胃外科の歩みを振り返って
⓫ 早期胃癌に対する機能再建術式としてのパウチ再建法
COLUMN 手術から学んだこと,そして未来へ
⓬ 早期胃癌外科治療に必要な腹腔鏡・ロボットの基礎知識
⓭ 早期胃癌外科治療における術式の選択
Ⅹ.外科治療編2 早期胃癌に対する標準手術
❶ 早期胃癌に対する手術と実臨床
❷ 早期胃癌に対するロボット支援下手術および開腹手術の位置づけ
❸ 早期胃癌に対する開腹リンパ節郭清の実際
❹ 腹腔鏡下幽門側胃切除D1+の実践1―⑥郭清の標準的手技とバリエーション
❺ 腹腔鏡下幽門側胃切除D1+の実践2―膵上縁リンパ節郭清の標準的手技
❻ 腹腔鏡下幽門側胃切除D1+の実践3― 1 ~ 3a 郭清の標準的手技
❼ 腹腔鏡下幽門側胃切除D1+の実践4― 4sb ~ 4d および⑤郭清の標準的手技とピットフォール
❽ 腹腔鏡下幽門側胃切除の実践―十二指腸切離と胃切離
❾ 腹腔鏡下胃全摘D1+の実践1―胃脾間膜切離と②郭清
❿ 腹腔鏡下胃全摘D1+の実践2―食道切離と食道空腸吻合法
⓫ ロボット支援下胃切除における腹腔鏡下胃切除術との差異と留意点
⓬ 早期胃癌腹腔鏡手術におけるreduced port surgery
⓭ 腹腔鏡下幽門側胃切除後のBillrothⅠ法再建―その実際とバリエーション
⓮ 腹腔鏡下幽門側胃切除後のRoux-en-Y法再建―その実際とバリエーション
⓯ 腹腔鏡下幽門側胃切除後のBillrothⅡ法再建―その理由と利点・欠点
⓰ 腹腔鏡下胃全摘後のRoux-en-Y法再建―その実際とバリエーション
⓱ 腹腔鏡下胃全摘後のRoux-en-Y法以外の再建法
⓲ ロボット支援下胃切除における消化管再建の実際と留意点
Ⅺ.外科治療編3 早期胃癌に対する機能温存・機能再建手術
❶ 幽門保存胃切除術の適応と治療成績
❷ 幽門保存胃切除術の実践1―郭清範囲の縮小と神経・血管温存の実際
❸ 幽門保存胃切除術の実践2―胃胃吻合法とそのバリエーション
❹ 噴門側胃切除術の適応と治療成績
❺ 噴門側胃切除術の実践1―胃の切除範囲とそのデザイン
❻ 噴門側胃切除術の実践2―食道残胃吻合のバリエーションとその成績
❼ 噴門側胃切除術の実践3―逆流防止機構の実際
❽ 噴門側胃切除術の実践4―ダブルトラクト再建法
❾ 胃分節切除術の適応と治療成績
❿ 外科的胃局所切除術の適応と治療成績
⓫ 早期胃癌に対するLECS
COLUMN Sealed EFTR
Ⅻ.外科治療編4 術後合併症・後遺症・術後障害・機能評価
❶ 胃切除後の術後管理とクリニカルパス
❷ 胃切除後の周術期合併症
❸ 胃切除後の後遺症とその対策
❹ 胃切除後障害の種類
❺ 胃切除後障害とQOL評価法
❻ 胃・残胃の機能評価検査法の種類と成績
❼ 幽門保存胃切除後・胃分節切除後に特有な術後障害・後遺症とその対策
❽ 噴門側胃切除後に特有な術後障害・後遺症とその対策 1
❾ 胃局所切除後に特有な術後障害・後遺症とその対策
❿ 胃切除後症例への栄養指導
⓫ 早期胃癌術後症例に対する化学療法の是非
⓬ 早期胃癌治療後のfollow up法
早期胃癌のすべて
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