【目次】
Ⅰ.基礎研究
脊柱後縦靱帯骨化症遺伝研究の最新知見 ―ゲノムワイド関連解析から臨床応用へ 小池良直
Ⅱ.脊柱靱帯骨化症の疫学・病態
1.疫 学
脊柱靱帯骨化症レジストリ症例登録の現状と課題 高橋 宏
頚椎後縦靱帯骨化症の保存レジストリの構築 小沼博明
2.脊髄損傷
後縦靱帯骨化症と頚髄損傷―Optimal treatment for Spinal Cord Injury associated with cervical canal Stenosis(OSCIS)試験を含めて 飯塚陽一
3.靱帯骨化と肥満・糖代謝異常・成人病関連
後縦靱帯骨化症の発症における内臓脂肪蓄積の役割 ―body mass indexとの相互作用に着目した検討 遠藤 努
4.靱帯骨化と栄養
後縦靱帯骨化症と骨代謝の関連 土肥 透
5.後縦靱帯骨化症のバイオマーカー
後縦靱帯骨化症の病態解明と臨床応用をめざすバイオマーカー研究の最前線 川口善治
Ⅲ.画像研究
1.各脊柱靱帯骨化の関連
画像診断からみた各脊柱靱帯骨化症の関連 森 幹士
2.骨化形態と臨床症状
脊柱靱帯骨化症の全脊柱骨化形態と臨床症状との関連 ―脊柱靱帯骨化症調査研究班の研究成果から 平井高志
3.骨化進展評価
後縦靱帯骨化症の進展病態および臨床的課題 川口善治
Ⅳ.骨化症の評価・診断
1.痛み・しびれの評価
脊柱靱帯骨化症の評価・診断 ―痛み・しびれの評価 横関雄司
2.その他
頚椎後縦靱帯骨化症に対する人工知能による手術予後予測の最前線と今後の展望 牧 聡
Ⅴ.手術療法
1.頚椎後縦靱帯骨化症
頚椎後縦靱帯骨化症に対する前方法up-to-date 坂井顕一郎
頚椎後縦靱帯骨化症に対する手術療法 ―最新のエビデンスから 名越慈人
頚椎後縦靱帯骨化症における術式選択 ―K–lineを中心とした適応と選択の実際 高橋 宏
K–line(+)の頚椎後縦靱帯骨化症に対する前方除圧固定術と椎弓形成術 ―神経回復と合併症のトレードオフ 井上嵩基
頚椎後縦靱帯骨化症に対する手術療法の合併症(C5麻痺の詳細を含む) 江川 聡
嚥下障害を主訴とした頚椎前縦靱帯骨化症(Forestier病)に対する手術成績 三原久範
Anterior controllable antedisplacement and fusionの術式の詳細とピットフォール 大槻文悟
2.胸椎後縦靱帯骨化症
胸椎後縦靱帯骨化症に対する前方進入骨化前方浮上術 進藤重雄
ハイブリッド手術室におけるextended reality(XR)技術を用いた術中画像支援による胸椎黄色靱帯骨化症に対する顕微鏡視下手術の新展開 篠原 光
胸椎後縦靱帯骨化症に対する後方進入前方除圧術後麻痺増悪の危険因子と周術期管理戦略 高橋康平
胸椎黄色靱帯骨化症に対する手術療法 ―適応,術式選択,成績と合併症,今後の展望 伊藤定之
Ⅵ.術 後
1.術後評価・アウトカム
胸椎後縦靱帯骨化症に対する後方除圧固定術後の骨化巣の三次元的形態変化の特徴と今後の展望 渋谷洋平
2.術後リハビリテーション
術後C5麻痺に対するロボットスーツHALを用いた機能回復治療 山崎正志
3.感染予防
脊椎インストゥルメンテーション手術後の一次縫合創に対する閉鎖式陰圧療法による感染予防 辰村正紀
Ⅶ.びまん性特発性骨増殖症
1.疫 学
無作為抽出した地域コホートにおけるびまん性特発性骨増殖症の実態 上原将志
早期びまん性特発性骨増殖症に関する疫学的検討 和田簡一郎
2.脊椎関節炎および類似疾患との鑑別
びまん性特発性骨増殖症と脊椎関節炎の鑑別 髙橋拓也
3.びまん性特発性骨増殖症関連骨折
びまん性特発性骨増殖症に伴う脊椎損傷の診断と治療 武田和樹
びまん性特発性骨増殖症を伴う胸腰椎椎体骨折に対するskull clamp-assisted position ―従来法との比較 小林 洋
びまん性特発性骨増殖症患者における胸腰椎損傷に対する手術療法 魚谷弘二
強直性脊椎炎に伴うAndersson lesionおよびびまん性特発性骨増殖症に伴うAndersson-like lesionの病態と治療 奥脇 駿
【序】
脊柱靱帯骨化症は,脊柱支持組織の異所性骨化を特徴とする疾患群であり,その代表である頚椎後縦靱帯骨化症(ossification of posterior longitudinal ligament:OPLL)は,1960年に月本裕国先生により剖検例としてはじめて報告された.以後,わが国を含む東アジアにおいて罹患頻度が高いことが明らかとなり,疫学,病態,診断および治療に関する研究は主としてアジアを中心に発展してきた.1975年には頚椎OPLLが厚生省特定疾患に指定され,調査研究班が組織されたことで体系的研究が進展し,基礎から臨床にいたるまで多くの知見が蓄積されてきた.
臨床雑誌『整形外科』においても2018年5月増刊号で特集が組まれてから8年近く経過し,この間に画像診断技術の進歩,遺伝学的研究の深化,手術手技および周術期管理の向上など,多くの新たなエビデンスが蓄積されている.一方で靱帯骨化の詳細な発生機序はいまだ明らかではなく,自然経過,進行予測,最適な手術法選択,最適なリハビリテーションについて未解決の課題も少なくない.また術後に残存する痛みに対する治療も今後改善が必要なトピックの一つである.
本号「脊柱靱帯骨化症up-to-date」ではOPLLの基礎的研究の最新知見に加え,靱帯骨化症の画像解析,頚椎OPLLおよび胸椎黄色靱帯骨化症(OYL,OLF)の臨床,難治例の多い胸椎OPLLの手術療法,術後に残存する痛みや人工知能(AI)を用いた予後予測,ロボットリハビリテーションなど多岐にわたる投稿をいただいている.さらに骨化症候群の一部とも考えられる,びまん性特発性骨増殖症(DISH)についても多数の論文を掲載することができた.本号が,靱帯骨化症治療・研究の現状と今後の展望を整理する契機となり,さらには靱帯骨化症で苦しむ患者さんの真の治療成績向上につながれば幸いである.
2026年4月
東京科学大学整形外科
吉井俊貴