刑法175条(わいせつ物頒布等罪)の「わいせつ」概念を基に、性表現規制の根拠として措定される「正常さ」とは、何に由来するのか。その「正常さ」は特定の者——女性や非異性愛者などの周縁化されてきた者——の「他者」化を招くものではないか。この問題は既存の刑事法学・憲法上の議論で解決可能なのかを探り、フェミニスト法学の議論を手がかりとして分析を試みる。近年、性暴力に関する刑事規制に対して大幅な改正が行われていること(性犯罪法改正)、他方で同様に性に関する刑事規制でありながら、法改正やそれに繋がる議論が性犯罪規程と同程度にはなされていない刑法175条のわいせつ物頒布等罪の案件(ろくでなし子事件など)を対比し、論を進める。