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父系血統主義の系譜

父系血統主義の系譜

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商品説明
現代韓国の血統主義が、実は植民地期に日本の法整備によりもたらされた、日本由来の「創られた概念」であることを明らかにする。
目次
はじめに―――現代韓国の父系血統をめぐる起源の再考    


序章 先行研究において抜け落ちた視角と本書の視角枠組み  
1 植民地政策批判の再考
  1-1 同化政策批判への批判  
2 近代化という名の日本化を克服する議論――植民地近代性論、又は植民地的近代
  2-1 植民地近代性論の視角  
  2-2 植民地近代性論の問題点  
  2-3 植民地近代性論の指標となる日本型近代と朝鮮の儒教との交差  
3 本書の進め方
  3-1 視角枠組み  
  3-2 史料の妥当性  
  3-3 本書の構成  




第1部――韓国併合以前の日本と朝鮮の世代承継と血統  


第1章  植民地朝鮮に持ち込まれた血統とは何か 
1 明治期日本の世代承継と血統
1-1 親族枠組みと生物学的つながり  
1-2 日本と西欧の血統に対する思考枠組みの相違  
1-3 旧民法起草過程における西欧型血統概念の日本語「血統」への翻訳  
2 明治期日本と東アジアの血統観の相違点と日本型血統観の普遍化
2-1 生物学的つながりを重視する日本と精神的つながりを重視する儒教  
2-2 日本の父子の「儒教化」  
2-3 「孝」・「親」の日本化  
3 小括


第2章  朝鮮時代の私領域における規範上の婚姻と親子  
1 朝鮮時代の国制書の編纂方式――一貫した規範の維持  
2 国制書をとおして見る父子の生物学的つながりに対する認識の変遷  
2-1 奉祀条と立後条の矛盾と解釈  
2-2 条文の解釈をめぐる議論と定式化  
3 庶孽の後嗣をめぐる観念の生成  
3-1 嫡妾の分  
3-2 嫡庶の別と世代承継の論理としての「気」  
4 小括  


第3章  公領域での朝鮮時代の庶孽差別  
1 科挙受験に及ぼす実母の婚姻上の立場  
1-1 科挙をめぐる規定  
1-2 再嫁失行婦女の子孫と科挙受験  
1-3 国家と科挙選抜における庶孽  
2 庶孽禁錮之法の緩和  
3 刑法大全の施行までの経緯と制度上の庶孽差別の「消滅」  
3-1 刑法大全の制定と庶子をめぐる条文  
3-2 軍国機務処による開国五〇三年の議案と『現行 大韓法規類纂』  
4 小括    


第4章  「三宗の血脈」と英祖の憂鬱  
1 王位継承の要件  
1-1 東アジアの王位継承と朝鮮王朝の王位継承  
1-2 朝鮮王朝の王位継承の様々な形  
2 世子の選定と王位継承の風儀  
2-1 嫡長子による王位継承  
2-2 廃世子後に他の適格者が王位継承したケース  
2-3 王の崩御直前あるいは崩御後の王妃による王推戴  
2-4 反正などによる王廃位と次期王  
3 景宗―英祖の王位継承「三宗の血脈」の誕生  
3-1 「三宗の血脈」の誕生前夜  
3-2 英祖の世弟冊立と「三宗の血脈」の誕生  
3-3 「三宗の血脈」と英祖の憂鬱  
4 小括  


第2部――植民地朝鮮における旧慣温存政策のあとさき  


第5章 旧慣温存政策の朝鮮民事令への波及  
1 日本の司法権の拡大と旧韓国の司法の委縮  
1-1 韓国裁判所の設置  
1-2 韓国裁判所における判断の基準  
2 日本人司法官の手による旧韓国の法治国家化の頓挫  
3 「帝国憲法の適用」と朝鮮の慣習  
4 朝鮮民事令と旧慣温存政策  
5 小括  


第6章 植民地朝鮮の法源となる慣習の認定過程  
1 梅謙次郎と旧韓国の司法整備  
2 慣習調査事業と「慣習調査報告書」の作成方針  
3 各地の慣習調査報告と朝鮮総督府の「慣習調査報告書」  
3-1 明治民法と慣習調査問題  
3-2 各地の慣習調査と「慣習調査報告書」の相違  
4 小括  


第7章 民籍法における「朝鮮の慣習」という名の日本型父系血統主義の導入 
1 民籍法以前の戸籍制度にみる戸籍の機能  
2 民籍法の制定  
2-1 民籍法制定の警察行政上の目的  
2-2 登録を円滑にするための慣習の採用  
2-3 民籍の編製方針  
3 民籍法改正による「家」と日本型父系血統主義の導入  
3-1 慣習の採用  
3-2 「朝鮮の慣習」という名の日本型父系血統主義の導入  
4 小結  


第8章  裁判における日本型父系血統の「朝鮮の慣習」化  
1 史料と先行研究  
2 日本と朝鮮の血統概念の枠組みの相違  
3 朝鮮時代後期の父子の推定の事例  
3-1 早産で生まれた子の父の推定の経緯  
3-2 礼を重んじる朝廷の判断  
4 朝鮮民事令施行前の日本人裁判官の判断――庶子相続権ヲ有スルコトハ韓国ニ於ケル法則ナリ  
4-1 裁判の指針と裁判官の資質  
4-2 相続権争訟に関する件(明治四三年民上第一四号、明治四三年二月一九日判決)  
4-3 朝鮮民事令施行前の養子と庶子の相続権  
5 朝鮮民事令施行後の日本人裁判官の「慣習に依る」判断  
5-1 閔泳翊の世代承継者は誰か――朝鮮民事令施行後の日本人裁判官の判断  
5-2 閔泳翊による閔俊植の養子確認請求訴訟に対する高等法院の判断  
6 判断の変更―ー庶子がいる場合の養子縁組は名門勢家各自の一個の専断行為 
6-1 家督相続権確認並民籍抹消請求の件(大正六年民上第二一五号、大正六年一一月二七日判決)  
6-2 判断基準の変更と日本の父子をめぐる観念  
7 小括  


第9章  姓は男系の血統の標識・氏は家の称号  
1 朝鮮民事令における旧慣温存政策の目的  
2 朝鮮民事令の制定と改正  
2-1 朝鮮民事令の制定  
2-2 朝鮮民事令第一一条の一九二一年改正  
2-3 朝鮮民事令第一一条の一九二二年改正  
2-4 朝鮮戸籍令の制定と共通法第三条の施行  
3 朝鮮民事令第一一条の一九三九年改正  
3-1 一九三九年改正までの経緯  
3-2 旧慣温存政策の合理化と創氏制度  
4 姓氏の概念規定と政策の亀裂――「姓は男系の血統の標識・氏は家の称号」  
4-1 姓氏の概念規定「姓は男系の血統の標識・氏は家の称号」  
4-2 一九三九年の改正と政策の亀裂  
5 皇民化政策の亀裂のその先  
6 小括  


第10章  韓国の民法制定過程に見る父系血統主義の誕生  
1 民法制定のプロセス  
1-1 アメリカが想定していた韓国の家族法像――アメリカ軍政期の司法整備  
1-2 民法典の制定の経緯  
1-3 比較のための朝鮮民主主義人民共和国の解放後の法整備  
2 血統の自画像と家族法  
2-1 張暻根の場合  
2-2 金炳魯と鄭光鉉の場合  
3 国会審議に見る男系血統主義と戸籍  
3-1 女性の戸主相続と血統と戸籍  
3-2 同姓同本禁婚における血統と植民地朝鮮に定着した日本の生殖観  
3-3 父系血統主義を概念規定する戸籍  
3-4 父系血統主義における子――親生子女・出生子・養子  
4 父系血統主義の「解体」の始まり  
5 小括  


終章  植民地朝鮮における「父系血統主義」と司法政策の臨界  
1 朝鮮半島における父系血統の系譜  
1-1 日本における「血統」の誕生  
1-2 朝鮮時代の父子をめぐる観念  
1-3 旧慣温存政策と「朝鮮の慣習」としての日本型父系血統  
1-4 「朝鮮の慣習」と登録の植民地近代性  
1-5 植民地朝鮮における日本の司法政策の臨界  
2 植民地朝鮮という二重拘束(ダブル・バインド)の空間の効果  
3 受身の主体とヘゲモニーへの同意――再生産される植民地近代性  
3-1 第一世代の韓国法研究者の隔靴搔痒  
3-2 第二世代と第三世代の韓国法研究者の隔靴搔痒  
3-3 植民地空間におけるエリート法学教育と韓国の学知の連続性  
3-4 日本の戸籍の観念と戸籍の可塑的効果  
4 日本は血統を重視しない文化なのか――日韓の比較家族史・家族社会学・日韓比較文化論・ジェンダー研究  
4-1 日本は本当に血統を重視しない文化なのか  
5 本書の限界と展望――日本型血統概念から波及した研究の再考に向けて  

韓国の礼との出会い―――あとがきにかえて
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