私たちの生活のなかでも卑近なものと軽んじられがちな空間に、「用を足す」場としてのトイレがある。
しかし開発途上の国々や地域の文脈からすると、ことは違って見えてくる。トイレは、宗教や文化だけでなく公衆衛生、環境・エネルギー問題、ジェンダーや障害者の社会包摂といった社会的課題にかかわる、じつに奥の深いテーマなのだ。
日々調査に携わっている研究者たちは、現地のさまざまなトイレ事情に直面して苦労し、驚き、ときには恐怖を体験し、そして多くの発見をしている。本書で取り上げられるのは、日本をはじめ、東アジアに位置する韓国から東南アジア、南アジア、中央アジアを通って西アジアのトルコにまで至る、19の国と地域だ。トイレからアジアを覗くと何が見えてくるだろうか。
本書は、アジア研究に携わる総勢20名の専門家が急速に変わりゆく各地で遭遇した、トイレをめぐるカルチャー・ショックや現地社会に関するエピソードが満載のエッセイ集である。「いざ」というときに備えて、各エッセイの冒頭にはトイレに関する実用的な現地語講座がつけられているので、ぜひ活用していただきたい。