経済安全保障の重要性が飛躍的に高まっている。日本では 2022 年、経済安全保障推進法が成立し、産業界ひいては知財戦略においても対応が求められるようになってきている。
例えば 2024 年、特許の出願に際し安全保障に関する考慮を求める経済安全保障特許非公開制度が導入された。制度上は予見可能性を確保するため、分類等による一定の基準が設けられているものの、場合によっては政府当局とのコミュニケーションが求められるなど、従来には存在しなかった対応が必要となる。すなわち知財戦略においても、経済安全保障をどのように位置づけるかは極めて重要となってきている。
本書は、このような問題意識のもと経団連総合政策研究所が 2024 年から進めてきた、「経済安全保障と知的財産」研究プロジェクトの成果である。AI・データへの規制と自律性の確保や、量子コンピューティングのような研究開発に重きを置くディープテックの推進など5つの重要カテゴリーごとに、第一線の研究者や実務家が最先端の議論を展開している。一方で、随所に事例やコラムを挿入することで、読みやすく実践的な編集を行い、実務家に役立てていただくことを目指している。
経済安全保障概念を知財戦略に組み込むことは、これまで比較的自由に行われてきたイノベーション活動や発明活動の一部に対して、新たに管理や制約を課すことを意味している。これは大企業だけでなく、中小企業、スタートアップ、さらには研究機関に至るまで、知財戦略への取り組み方を大きく変えることになろう。
本書は、経済安全保障政策を踏まえた知財戦略への基礎的な視座を提供するのとともに、実務の場でも折に触れ参照いただける内容となった。企業・組織の規模を問わず、経営層、知財戦略を直接担当する方、さらには新規事業担当者や研究開発担当者にも手に取っていただきたい。