日本の大企業では、新規事業の重要性が繰り返し指摘されているものの、短期業績重視のプレッシャーのもとで、新規事業の芽は、そう簡単には生まれない状況が続いている。しかし、困難の中にあっても、自らリーダーとなり、上層部に、さらには横の関係にも働きかけ、周囲を巻き込みながら新規事業を推進する「社内イノベーター」が存在すると、本書の筆者は指摘する。
このような「社内イノベーター」は、なぜ、自らリーダーとなって動き出すのか?そして、いかなるリーダーシップと意思決定によって新規事業を前進させているのか?
本書では、これらの問いに答えるべく、組織内で自律的にイノベーションを推進する「リーダーであり企業家」として「社内イノベーター」を捉え、その自律的行動の動機付けとリーダーシップ、意思決定のあり方を実証分析によって明らかにする。
すなわち、「社内イノベーター」は、新奇性追求・独自性欲求と協働知自己効力感という心理的要因に動機づけられ、上層部と横の関係に働きかけながら自律的にリーダーシップを発揮し、変革を進める。筆者はこれを「種火型リーダーシップ」という独自概念で説明する。
さらに大企業における新規事業の意思決定では、起業家のための理論エフェクチュエーションだけでなく、コーゼーションとの柔軟な使い分けが効果的であるとして、エフェクチュエーションとコーゼーションの併存モデルが提示される。
こうして筆者は、従来型の理論を批判的に検討し、大企業のミドルの視点から、新規事業を推進するリーダーとしての「社内イノベーター」像を浮き彫りにしていく。
学術的・理論的な要素は、コラムなどにまとめており、実務家にも重要な項目を無理なく理解することができるよう工夫されている。イノベーション戦略や人材育成についての提言も充実しており、大企業における新規事業担当者はもちろん、人材開発部門で「イノベーション人材」「次世代リーダー」育成にかかわる担当者にぜひ、おすすめしたい。