母さんがいて、妹がいて、親友のビニがいる。
たいせつな人たちに囲まれて、ぼくの道は未来へとまっすぐ続いているはずだった。
でもある日、突然、母さんがぼくに秘密を打ち明けた。
そして「ビニと二人で、国から逃げなさい」って言ったんだ。
母さんと妹を残し、砂漠や海を越えた、はるか遠く――ヨーロッパへ。
ところがその晩、兵士が家に踏み込んできた。
トラックに乗せられ、たどり着いた先は、まさに地獄としか言いようのない場所だった……。
独立以来30年以上独裁政権が続く、主人公シフが暮らすエリトリア。
政府の意向に対し少しでも反する意思を見せた者は、即座に拘束される。
シフ、そしてビニが連れていかれたのは、砂漠の真ん中に置かれた、船に積むべきコンテナだった。
そしてその中には、十数人の男たちが詰め込まれていた。
個性を剥ぎ取られ、何もできず、ただ生きるだけ。
男たちは、シフとビニに、ある提案をする。それは、彼らの心に灯る最後の希望だった。