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私をほどく

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商品説明
早稲田大学在学中にAV女優「渡辺まお」としてデビューし、人気を一世風靡するも、大学卒業とともに現役を引退。その後、文筆家・タレント「神野藍」として活動し、注目されている。
AV女優「渡辺まお」時代の「私」を、神野藍がしずかに、懸命にほどいた一年の軌跡。ホス狂い、身バレ、ストーカー、死の予感・・・
「どうか私から目をそらさないでほしい」 今だからこそ赤裸々に綴った衝撃のエッセイ。魂の叫びに感涙必至。

はじめに

二十歳のとき、私はビデオカメラの前で裸になった。思わず目を細めてしまうほどの照明の中、沢山の人間に囲まれてするセックスは思いのほかあっけなかったのを覚えている。快楽も衝撃もないまま、渡辺まおとしての人生は始まった。

現役の間、無我夢中に走り続けた。ぽっかりと空いた何かを埋めるように、撮影を詰め込んでいた。私が欲しかったのは人気でもお金でもなく、抱えている苦しみから目を逸そらすための痛みだった。私は自分の抱えている苦しみの正体が分からなかった。
裸になることで失ったものなのか、決断したことへの後悔なのか、渡辺まおになる前からあったものなのか。もしかしたら、その全てなのかもしれない。

私はそっと蓋をした。目を逸らして何もなかったことにすれば大丈夫だと。痛みは痛みで塗り替えればいい。全て塗り潰してしまえば、もう何も見えない。
二十二歳のとき、私はビデオカメラの前で裸になるのをやめた。渡辺まおと決別し、私として新しい道を歩むはずだった。なぜか身動きが取れなかった。
知らず知らずのうちに、私は私に呪いの茨を巻き付けていた。

「私は幸せになれない」
「私は汚い」

灼けつくような感情に襲われる。蓋をして見て見ぬふりをしていたものたちが、甘い言葉を囁いてくる。「一緒に溺れてしまえば、楽になれるよ」と。
それでも良いと思った。何もせず、何も考えないまま「私って幸せになれない」と思っている方が、進みはしないが新たには傷つかない。

でも、本当に何もしないことが私にとっての救済なのだろうか。進んでいるようで、進んでいない人生をなぞることが私のためになるのだろうか。

私の呪いを断ち切れるのも、私を救い出せるのも私だけだ。
他の誰かに任せてはいけない。
私の身体に刃を突き立て、溢れ出た血で言葉を残す。

神野藍

作家・鈴木涼美さん絶賛!
「生きること、考えること、女であること、自分であることをサボらず誤魔化さなかった元エリートAV女優が綴る〝若い女のリアル〟。
とても貴重な、心強い書き手の登場です。」
目次
はじめに

#1 すべての始まり
#2 脱出
#3 初撮影
#4 女優としてのタイムリミット
#5 精子とアイスクリーム
#6 「ここから早く帰りたい」
#7 東京でのはじまり
#8 私の家族
#9 空虚な幸福
#10「一生をかけて後悔させてやる」
#11 発作
#12 AV女優になった理由
#13 セックスを売り物にするということ
#14 20万でセックスさせてくれませんか
#15 AV女優の出口は何もない荒野だ
#16 後悔のない人生の作り方
#17 刻まれた傷たち
#18 出演契約書
#19 善意の皮を被った欲の怪物たち
#20 彼女の存在
#21 「かわいそう」のシンボル
#22 わたしが殺したものたち
#23 28錠1シート
#24 無為
#25 近寄る死の気配
#26 帰りたがっている場所
#27 わたしとの約束
#28 読書について1
#29 読書について2
#30 孤独にならなかった
#31 人生の新陳代謝
#32「私を忘れて、幸せになるな。」
#33 戦闘宣言
#34「自衛しろ」と言われても
#35 セックスドール
#36 言葉の代わりとなるもの
#37 雪とふるさと
#38 苦痛を換金する
#39 暗い森を歩く
#40 業
#41 四度目の誕生日
#42 私を私たらしめるもの
#43 ここじゃないどこかに行きたかった
#44 進むために止まる
#45「好きだからしょうかなかったんだ」
#46 欲しいものの正体
#47 あの子は馬鹿だから
#48 言葉を前にして
#49 私をほどく
#50 あの頃のわたしへ

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