「毎日新聞」連載小説(2024年5月~2025年12月)書籍化。
2013年のデビュー以来、三島由紀夫賞、芥川賞、川端康成文学賞、島清恋愛文学賞と、着実に文学賞の受賞を重ねている注目作家・上田岳弘初の新聞連載小説。
総合商社を退職した30代後半の男性・弓台は、量子力学を研究する女性科学者・布藤真実と再会する。真実は研究所の量子コンピュータを使った私的流用によって職場を追われていた。時代は現代。真実が開発した量子コンピューターを巡ってこのリアリズム的なパートは動き始める。一方、選ばれた科学者たちの活動を描くパラレルワールド(並行世界)が進行する。四方を透明の壁に囲まれたもう一つの世界では、壁が一気に閉じる破滅的な現象「大縮減」が予言されており、科学者たちは脱出計画(エクソダス)の研究に奔走していた。現実世界とパラレルワールド、二つの世界の物語はやがて干渉しあい、接近し、終盤にいたってついに融合する。その時何が起こるのか。壁に隔てられた向こう側には何があるのか?
現代文学の先端を走り続ける著者が、デビュー10年を経て、「ウォーミングアップが終わり、本作が『本番』の始まりの仕事」として挑んだ新たな代表作。