本書『人類学の百科事典』は、日本で類を見ない総合的な人類学の百科事典です。近年飛躍的に発展した研究成果を体系的に整理し、人類学の全体像と最新知見を広く社会へ伝えることを目指しています。
人類学とは、「生物としてのヒト」を総合的に研究し、「人類とは何か」を科学的かつ実証的に理解する学問です。
その目的は、人間自身について偏りのない認識を得ることにあり、「人類の本質(他の生物との共通性と独自性)」「人類の変異(個体差や集団差とその意味)」「人類の由来(起源と進化)」という三つの観点が重視されます。研究対象は、ヒトの身体や遺伝、行動、生態、文化、進化の歴史から、地球環境や近縁動物との比較まで多岐にわたります。
本書では、自然人類学を中心に、生理・文化・生態人類学、考古学、地球科学など幅広い関連分野を横断的に扱い、「人類とは何か」という問いを多面的に探究します。人類学はしばしば、身体や進化を自然科学的に探究する「自然人類学」と、文化や社会を人文科学的に考察する「文化人類学」に大別されますが、実際には考古学、霊長類学、遺伝学、解剖学、古生物学、第四紀学など多様な学問と重なり合う包括的な学問領域です。
全14章構成で、ヒトの構造と機能、進化、日本列島の人類史、心と社会、生態と文化、現代社会との関わりまでを網羅。各テーマは、重要事項を厳選した1見開き完結型で、「基本概念」「研究の展開」「現代的トピックス・展望」に沿ってわかりやすく解説されます。調べるためだけでなく読む楽しさ備えた、信頼できる知の入口となる一冊です。