「フッサールの『イデーンI』が、20世紀の産んだ最も代表的なかつまたきわめて重要な哲学書の一つであることは、疑いを容れないであろう。しかもここに刊行される本訳書に収載された同書の後半部分は、フッサール現象学において最も基本的ないわゆるノエシス・ノエマ的諸構造の解明に充てられた箇所を含んだものである。フッサールにあっては、現象学的還元を施されたありとあらゆる実在的かつ理念的な世界は、その実、まさにこのノエシス・ノエマ的諸構造に即して、その本質的な成り立ちの面から、捉えられ究明されるに到るのであり、その結果、真なる現実の構成の解明へと、着手がなされる。このような構成的現象学の理念こそが、本書を貴いている根本思にほかならない。そしてそのような構成的現象学の企図を支える最も基本的な道具立てが、ノエシス・ノエマ的な諸構造なのである。フッサールは、ここにおいて、世界と志向的にかかわる意識の根本構造を見極め、それにもとづいて真なる現実を照らし出そうと努めるに到っているのであり、そのような超越論的な構成的現象学の構築のための一般的諸前提を提起することによって、本書『イデーンI』すなわち「純粋現象学への全般的序論」は、閉じられるのである。」(訳者あとがき)