アイデンティティ概念の提唱者として広く知られるエリクソンの、80歳にして刊行した晩年の主著。各発達段階に簡潔な要約を与えながら、個人のライフサイクルを超え、世代から世代へのサイクルも視野にいれ展開される論旨は、歴史的人間への理解の深さを示す。
エリクソンが精神分析学者として一頭地を抜いているのは、人間は、つねに社会との相互的な関わりあいの中で発達的に形成されていく、とする一貫した視点に支えられた研究の深化による。発達段階の「心理的・社会的理論化において各々の人生段階が担う中心的役割を考えてみると、我々はどうしても歴史的相対性という問題に突き当たらざるを得ない」。「老年期」が「発見」されたのは、この数十年の間でのことである。老人の数の増大が、一握りの「長老」から大量の「年長者」へという質の変化をもたらし老年期の再定義を迫る。
エリクソンと終生歩みを伴にした妻ジョウンの三章(第九の段階/老年期とコミュニティ/老年的超越)を増補した本書は、現代が直面する「老年期」を考える上でもよき導きの手となろう。