ただ、山が好き。
その静かな情熱が、彼女を世界の山へと導いた。
国内外の難壁を次々に登攀していった山野井妙子。
夫の泰史と出会い、ふたりで過酷な山に挑む。
彼女の人生は、日常と登山を等しく大切にする姿に貫かれている。
アルパインクライマー山野井妙子の半生を綴ったノンフィクション。
ヨーロッパアルプスやヒマラヤなどで数々の登攀を成功した妙子は、世界的なクライマーとして頭角を現わす。しかし、その道は平坦ではなく、マカルーとギャチュン・カンの登攀では両手足の指の多くを失う壮絶な経験をする。
パートナーである夫・泰史と国内外の山々に挑み続け、現在は畑仕事や釣りを楽しみながら自然に根ざした穏やかな生活を送っている。
どんな困難な状況でも冷静さを失わず、ただひたすらに「いま」を生きる姿は、周囲の人々を惹きつける。
彼女の記録的な登攀の裏にある、穏やかで動じない「凪」のような心のありようと、その人生の軌跡を浮き彫りにした珠玉の一冊。
『山と溪谷』2024年4月号~2025年3月号に好評連載された記事に加筆修正して単行本化。