はじめに
序章 「できない」からはじめる保育者研究
第1節 経済的合理性から距離を置いた保育者の専門性理解へ向けて――本書の背景
第2節 保育を支えるのは「できない」ことを知るあなたしかいない――本書の目的
第3節 本書の構成
第1章 保育のいとなみを支える「実践的知恵」の探求へ向けて――問題の所在
第1節 ゆらぎ続けてきた保育者の専門性
1.科学的エビデンスの導入がもたらした専門性のゆらぎ
2.ガイドラインの改訂がもたらした専門性のゆらぎ
第2節 保育のいとなみを支える専門家とは何者か?――実践知研究におけるアプローチの対立
1.専門家とは現場の問題を解決できる思考を有する者である――認知的アプローチ
2.専門家とは状況や文脈に合わせて援助を生み出せる者である――状況的アプローチ
第3節 保育者とは問題を解決する人か?――アプローチ間の対立を超えるために
1.専門性の探求を支えてきた「実践知」概念の出自
2.問題への対応ありきで人々の営為をとらえる「問題解決」思考の不自然さ
3.なぜ保育者研究は「生活」から遊離するのか?――省察論を援用した研究デザインのクリティークから
4.保育は子どもと保育者がともにまだ見ぬ「生活」を編む場である――保育カリキュラム研究からの宿題
第4節 保育者の実践知を構成する2つの「知」
1.力量「技術知」と場への構え「実践的知恵」
2.実践的知恵は「子どもを変えることはできない」という思慮に宿る
第2章 実践的知恵の探求を支える方法論「生活の共同生成」の定位――問いの設定
第1節 その問題は保育者の手で解決できるとは限らない――思考実験
1.先行研究が取り上げてきた子どもの仲間関係をめぐる問題
2.保育者たちが問題の解決から距離を置くということ
3.リカとナナセのエピソードから
第2節 「できない」が暮らしをつむぐ――概念と方法論の設定
1.技術知に偏らないための思考法――道具と結果方法論
2.保育の場で子どもたちと暮らす
3.保育の場で「問題」と暮らす――生態学における「分解」概念からの示唆
4.ともに暮らすことに意味のある「課題」、その必然性がない「揉事」
5.実践的知恵をとらえる方法論「生活の共同生成」――生活、課題、援助
第3節 方法論「生活の共同生成」の定位をめぐる3つの問い――「問題解決」の方法論を相対化するために
1.問い――子どもの「課題」の受容は保育者に何をもたらすのか?
2.問い――子どもの「課題」をめぐってなされる営為は「対処」か「援助」か?
3.問い――保育者は子どもとともに「生活」する存在か?
第3章 子どもの「課題」の受容は保育者に何をもたらすのか?――クラス替えをめぐるフォーカス・グループ・インタビューから
第1節 問題と目的
第2節 方法
1.調査協力者
2.面接手続き
3.倫理的配慮
4.分析手続き
第3節 結果と考察
1.プロセス全体の動き
2.【クラス替えの有無の判断】
3.【園の基本方針に基づくクラス編成】
4.【子どもの成長と課題を踏まえたクラス編成】における《子どもの成長と課題の見とり》
5.【子どもの成長と課題を踏まえたクラス編成】における《見とりに基づく配置》
6.【整合性と決断】
第4節 総合考察
第4章 子どもの「課題」をめぐってなされる営為は「対処」か「援助」か?――“ひとりぼっちの子ども”と“親密すぎる二者関係”をめぐる面接調査から
第1節 問題と目的
第2節 方法
1.資料の収集方法
2.調査協力者の選定
3.提示事例および作成手続き
4.面接手続き
5.倫理的配慮
6.分析手続き
第3節 結果と考察
1.結果の概要と凡例
2.「充実」および関連する語の整理
3.保育者の課題意識を示す〈仲間関係の広がりへの期待〉
4.《保育者を媒介とした遊びの充実》をめぐるプロセス
5.《子どもたち主導の遊びの充実》をめぐるプロセス
6.仲間関係の変容をうながす保育者の営為に関する仮説モデル
7.議論の限界
第4節 総合考察
第5章 保育者は子どもとともに「生活」する存在か?――年長学年の組別対抗リレーにおける課題との“出会い”と“受容”をめぐる実践から
第1節 問題と目的
第2節 方法
1.調査協力園および観察対象
2.観察手続き
第3節 結果と考察
1.当時のA園におけるリレーの取り組みの概要
2.リレーの流行と生成しはじめる課題
3.課題と「出会う」子どもたちと保育者――リレーをめぐる「勝利至上主義」がもたらした亀裂
4.課題を「受容する」子どもたちと保育者――リレーのアンカーが抱えた心情の共有を通して
第4節 総合考察
終章 子どもたちと保育の物語をつむぐ「実践的知恵」――人々の唯一性を立ち上げる“弱くて強い”日々のために
第1節 研究目的と結果の整理
第2節 “弱さ”の特質を保障した専門性の実証的探求へ向けて
1.保育の“弱さ”は当事者たちの唯一性を創出する“強い”装置である
2.実践的知恵を実証的に照射する「物語的アプローチ」の提案
第3節 浮かび上がるもう1つの具体的営為――“弱さ”を守りながら大人として動く
1.保育者が有するもう1つの「顔」――それでもなお保育者は公的責任を有する教育者でもある
2.計画と援助を架橋する営為「約束」――保育者が2つの「顔」を持つために
第4節 課題と展望
引用文献一覧
おわりに