無機のバルク材料については合成手法もある程度決まっており,熱力学の制限が課されるため新物質の数も限られてきています.薄膜材料についてはそれら既存のバルク材料を薄膜化するという研究が主ですでに多くの分野が先鋭化するに至っています.
一方,主に準安定相である未知の物質を薄膜合成で実現するという研究には未踏の領域があり,筆者が携わってきたいくつかの新物質合成の分野に関わる基礎的な内容をまとめたのが本書になります.準安定相といってもすぐに化学変化してしまう短寿命のものもあれば,ガラスのようにきわめて安定なものもあります.最近の材料研究は流行りの材料に集中する傾向がありますが,準安定相の発掘の余地はまだまだあります.今後,薄膜材料の研究から新物質や新物性の発見を通してこれまでの常識を覆す研究が出れば望外の喜びです.(「まえがき」より)