すでに古典的名作となった『ウォールデン(森の生活)』の著者、ヘンリー・デイヴィド・ソローには、多くの著作があるほか、膨大な日記が遺されている。それは現在、14巻からなる『日誌(Journal)』として公刊されており、ソローの諸作品およびその思想の理解には、この『日誌』の読み込みが不可欠であるとして、筆者は長年にわたってその作業を続けてきた。そして、「色彩」が重要なキーワードであることを見出す。
自然を愛したソローは、野や林が、種々に変化する色彩を通じて、自分に語りかけてくるよろこびを知ったのである。さらに、彼は、朝夕の微妙な、一種神秘的な「色合い」を、ヒンズー思想の視覚化と捉えるよろこびも感じていた。「よろこびこそは生命あるものの必要条件である」とソローはいう。
自我を自然と一体化しようとしたかに見えるソローの生き方に関して、色彩の視角からのアプローチは、これまでほとんど行われてこなかった。筆者はその必要性を情熱を込めて説いていく。本書は、ソローの全体像を捉えようとする試みへの斬新な視点を提供するものとなった。