イタリアの光と闇Ⅰ

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イタリアの光と闇Ⅰ
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南北に長いイタリアは多様性に富むことで知られ、古今の旅人を惹きつけてきた。海峡を越え大陸を横断し、やっとの思いでアルプスを越えた北の人びとは、霧に包まれる湖水地方に降りていくか、あるいは陽光がきらめくアドリア海沿岸に向かうかを選ばなくてはならなかった。長靴にたとえられるこの地理的広がりのうちには、輝かしきコムーネの血脈がいまなお通う中世都市、皇帝の封土を起源とする華麗な公国の気配が残る地方、ヨーロッパの強国がぶつかりあう戦場の過去をもつ土地が、豊かな平原や石灰岩質の過酷な台地とともに在り、それぞれの歴史が自然と手を携えて独自の相貌と文化的風土を形づくってきた。地中海に突きでた半島と大小の島からなるこの地は、世界の中心であった古代ローマ時代に、巡礼者が聖都を目指した中世に、あるいは複数の「古代」が再発見されていく初期近代に、さまざまな時代に人びとの旅の目的地になったのである。
 プラーツの言葉によって編まれたイタリア巡りの道程は、北方の精神と響きあう高山と深い渓谷の織りなす絶景から始まる。都市に仮面のような束の間の相貌を与える祝祭や造物神の手になる庭を通り抜け、「神の賜物」と形容されたトスカーナの自然を見つめたあと、廃墟や遺跡がたたずみ、数千年の時間によって彫りあげられた風景へといたる。われわれの碩学はかつてイタリアに注がれた眼差しを追うように、失われた情景にも光をあてていく。霧深い北の陰影に彩られたかすかな表情から、白く乾いた大地に濃い影を落とすくっきりとした横顔まで、いくつものイタリアと出会えるであろう。
目次
プロローグ 霧深い北の陰影から白く乾いた大地へ  新保淳乃
ロンバルディアの庭園  新保淳乃
ダヌンツィオ博物館  新保淳乃
ヴェネツィアの祝祭  新保淳乃
ヴァーノン・リー  金山弘昌
騎士の庭  金山弘昌
モンタウト  金山弘昌
コロンナ岬巡り  新保淳乃
シチリア、円形劇場、墓地  新保淳乃
ジャン = バティスト・イザベイのイタリア旅行  新保淳乃
エピローグ 眼差し、自転車、そしてヴァーノン・リー  金山弘昌
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