神田橋條治の代表作の一つに、長年花クリニックで開催されてきた神田橋ゼミの実録『治療のこゝろ』全四十巻(花クリニック神田橋研究会刊行)がある。神田橋の語りの超絶技巧を楽しみながら、心理臨床の真髄を学ぶことができる独創的な名著として世評が高い。本書は『治療のこゝろ 巻三十六』の全Q&Aに原田誠一がコメントを寄せ、更にリコメントを神田橋條治が記したものである。
率直で斬新なコメントとリコメントが加わったことで、①神田橋臨床の実際がより広く、深く供覧され、②土居健郎、下坂幸三、西園昌久、中井久夫、J.パデルらとの交流の精華が具体的に紹介され、③現在の諸学(例:社会システム理論、基礎情報学、感情心理学、神経精神分析)の知見との一致が示されている。こうして『治療のこゝろ』の魅力が倍増し、この上なく実践的で独創的な臨床指導書がここに誕生した。