ヒトの発達と技能の習熟

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商品説明
「能力」という言葉で分断されたもの・ことに、新たな見方を  

技術を獲得し、成熟させ、新たな世代に継承する。「人生」という視点でみたとき、「できる」「できない」というとらえ方は必要だろうか。農業(エチオピア)、演奏・舞踏技術(バリ島)、人間の塔(スペイン)、ちんどん屋(日本)、チンパンジー(タンザニア)など、多彩なフィールドから、軽やかに加齢を楽しみ、豊かに生きる姿を描き出す。




……この指摘は,超高齢社会が急激にすすむ日本において,高齢者を過剰に「できない人」にしているのではないかという疑問を生じさせる。そして,現代社会で年齢を重ねていくうちに「できない」と思うことが増えていくと,人々は,運動や認知能力が青年期にある程度発達した後,ただ「衰退」へ向かうという一元的な生涯観を信じていくようにも考えられる。……本書『生涯をみつめる人類学(1巻・2巻)』におさめられている論考が,今を生きる私たちの世界を相対化し,多元的な生涯観を見出す手がかりになることを願う。(「『生涯を見つめる人類学』刊行にあたって」より)




●著者紹介
金子守恵
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科准教授
担当:序章,第1章(共著),第11章

重田眞義
京都大学名誉教授
京都大学アフリカ地域研究資料センター特任教授
担当:第1章(共著)

アルガチョ ボチェナ エリシ
ジンカ大学コミュニティーサービス学部助教
担当:第1章(共著)

田中綾華
京都大学大学院アジアアフリカ地域研究研究科一貫制博士課程
担当:第2章

小澤茉莉
東京科学大学環境・社会理工学院社会・人間科学系社会・人間科学コース博士後期課程
担当:第3章

鈴木良枝
国立音楽大学,青山学院大学他非常勤講師
担当:第4章

三津島一樹
京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程
担当:エッセイ1

岩瀬裕子
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所ジュニア・フェロー
担当:第5章

萩原卓也
東洋大学健康スポーツ科学部助教
担当:第6章

相原 進
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科特任助教
担当:第7章

伏木香織
大正大学文学部教授
担当:第8章

座馬耕一郎
長野県看護大学看護学部准教授
担当:第9章

松本卓也
信州大学理学部助教
担当:第10章

山越 言
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科教授
担当:エッセイ2
目次
序章 生涯を見つめる人類学に向けて―ヒトの発達と技能の習熟(金子守恵)
 1 固定的な生涯観の刷新と身体化された技能
 2 身体化された技能と知識の共有と配分,技能の習熟
 3 本書の構成
 4 今後に向けて―社会の予備力という考え方

第I部 技能の継承と世代
第1章 在来農業における知識の世代間差異―エチオピア在来作物エンセーテの地方品種に注目して(重田眞義・金子守恵・アルガチョ ボチェナ)
 1 はじめに
 2 アリの人びととエンセーテの栽培
 3 品種に関する在来知の様態
 4 在来知を受け継ぐ

第2章 つくりだされる継承の場―エチオピア西南部におけるオイサ演奏の技術獲得と継承の変化(田中綾華)
 1 はじめに―「教わる」ことではない技術の獲得
 2 オイサを演奏する人びと
 3 オイサ演奏技術の獲得
 4 地方行政が介入する演奏実践の場
 5 演奏技術の継承をめざす活動
 6 おわりに―演奏技術の獲得は「参加」から変わってゆくか

第3章 養蚕技術の省察的習熟―埼玉県秩父地域の養蚕農家に注目して(小澤茉莉)
 1 養蚕―蚕と人間が織りなす世界
 2 養蚕技術―蚕と人間の関わり合い
 3 養蚕技術の省察的習熟

第4章 クンダン奏者の技術の習熟と身体の関係性―バリ島のガムラン音楽における太鼓奏者の技術の獲得に関する考察(鈴木良枝)
 1 はじめに
 2 クンダンの音楽的役割とその演奏技術
 3 クンダンの学習プロセス
 4 「見えない理論」の実証―トゥンガルの規則性とヴァリエーションの比較
 5 「見えない理論」から「見える理論」へ―トゥンガルの指導方法の変遷
 6 クンダン奏者のパラダイムシフト
 7 おわりに―クンダンのわざの熟練と身体の関係性

エッセイ1  フィールドワーカー,徒弟になる―ガーナ都市部の自動車修理業における「私」の経験を事例に(三津島一樹)

第II部 ライフステージと身体を調整する技能

第5章 生の二重化―カタルーニャの「人間の塔」造りを継承するベリャに着目して(岩瀬裕子)
 1 長寿国の一角,スペイン・カタルーニャにおける「生」への構え
 2 生の二重化(個と集団あるいは共同性)という射程がもつ可能性
 3 「人間の塔」とその担い手たち
 4 生の二重化という生活技術
 5 手渡される塔造り,共有される「死」

第6章 ケニアにおける元自転車競技選手の人生の転がり方―習得した技能のしなやかな展開と消費社会を生き抜くバランス感覚(萩原卓也)
 1 はじめに―自転車競技を引退する若者はどうなってしまうのか
 2 他分野での活躍が期待されるアスリートの生涯
 3 人気上昇中の自転車競技とその需要に応える団体S
 4 ハスリングな社会背景と競技を退くに至った経緯
 5 身体技能とネットワークの調整
 6 加速する消費社会との距離の取り方とそのバランス調整
 7 団体Kとの比較から浮かび上がる団体Sの柔軟な展開力
 8 おわりに―生涯「現役」として転がっていく

第7章 大道芸人の経験と環境認識との関わり―視線測定装置を用いた分析と聞き取りを手がかりとして(相原 進)
 1 芸能における「環境」とその認識をめぐって
 2 調査対象「ちんどん屋」について
 3 調査方法
 4 視線計測のデータについての世代間比較
 5 考察

第8章 インドネシア・バリ島の芸能実践における加齢と身体技法―加齢に抗う/を補う/を受け入れる(伏木香織)
 1 はじめに―抗いようのない身体の衰え
 2 加齢に抗う―舞踊の基礎技術の習得
 3 加齢を補う―知識で補う
 4 加齢を受け入れる
 5 身体や芸能をめぐる価値観の転換
 6 おわりに

第III部 ライフステージと熟練していく技能
第9章 野生チンパンジーのベッド製作技術にみられる「熟練」(座馬耕一郎)
 1 睡眠の文化と技術
 2 チンパンジーに注目する理由
 3 チンパンジーのベッド
 4 ベッドの製作技術の発達
 5 熟練とは

第10章 長期野外フィールドワークが明らかにするチンパンジー社会の高齢個体の「生き様」(松本卓也)
 1 はじめに―非ヒト霊長類の生涯学
 2 昔の食物を覚えていたカルンデ
 3 孫と遊ぶクリスティーナ
 4 おわりに―社会の中で「老い」を捉える

第11章 エチオピア女性土器職人の技能の習熟―「私の手」で住まい方を創りだすことを手がかりに(金子守恵)
 1 「生涯学」において女性土器職人の技量のちがいに注目することの意義
 2 技能の習熟とは?
 3 アリの土器職人の一生
 4 土器の成形作業は女性職人だけが従事する
 5 年長職人の土器製作作業と日常生活動作,そして住まい方
 6 おわりに―多元的な生涯観を描き出す出発点としての技能の習熟

エッセイ2  ある老齢チンパンジーへの弔辞―ギニア・ボッソウ村で行われた「チンパンジーの葬儀」(山越言)
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