あなたを含め、身近なところに何かの、誰かのファンはいるだろうか。その人はいつファンとしての時間を過ごしているのだろうか
1990年に刊行が始まり、30年以上に渡り複数メディアでの展開が継続する人気作「スレイヤーズ」シリーズ――その長年にわたるメディアミックスとともに、女性ファンたちが自らのライフコースのなかで積み重ねてきた「スレイヤーズ」に関するファン経験やファン実践をていねいに描き出す。そうして、ファンたちが、それらの経験や実践にどのような意味づけを与え、どのようにそれぞれの〈作品〉を構築してきたのかを分析することを通して、ファン文化の持続を可能にしている条件について解き明かす。
実際のところ、私たちはいつでもファンとして(だけ)生きられるわけではない。日々の生活を成り立たせるために多くの時間を割かねばならないからだ。メディア技術の発展によってファンのフルタイム化が進んだ現在でも、1 日の時間配分や、1 週間の平日と休日のバランスなど、その人の生活リズムによってファンとして過ごすことのできる時間が決められてしまう部分は少なくない。こうしたファンたちの日々の生活は、これまでのファン現象に関する研究ではあまり注目されてこなかったが、これこそがファンをより深く理解するための重要な手がかりとなるというのが、本書の基本的な立場である。(「まえがき」より)
●著者紹介
杉山 怜美(すぎやま さとみ)
明星大学人文学部人間社会学科助教
主要著作・論文に、『アニメと場所の社会学――文化産業における共通文化の可能性』(編著,ナカニシヤ出版, 2024年)、「メディアミックスが支える〈保温〉状態のファン実践―― 「スレイヤーズ」を事例に」(『メディア研究』(104):127-146, 2024 年)などがある。