◆珠玉の句集
この数年、クロノス(時の長さ)とカイロス(その時)について考えていた。時の流れの中のいつか、どこか、だれかと、山を見ることで、本を読むことで、音楽を聴くことで、野を歩くことで触れるかもしれないのだった。風の日も雨の日もあった。雲間から日のの射すときもあった。この世を旅していると思うときもあった。(著者)
◆自選十句
孕み鹿月の裏側通りゆく
遠くまであをぞら遠くまで斑雪
いつよりの掛軸いつより山に藤
月蝕のあひだを吊るさるる単衣
片かげり橋がぽつりと見えはじめ
茂りゐて納骨を待つばかりなる
かりがねや水差うつむいてゐたる
裏山は影の領域栗を剥く
神無月巨木の枝が地に触るる
宮殿のつひに霜夜となりにけり