著者・佐藤藤三郎氏は1935 年山形県上山市狸森(むじなもり)生まれの91歳。中学校で無着成恭と出会い「山びこ学校」で学んでいる。急傾斜の畑と田んぼ、山仕事で生きるかたわら、集落の暮らしに根ざした独自の視点から旺盛な執筆活動を続けてきた。
著者が生まれ育ち住み続ける狸森は今後「消滅」しかねない状況にある。冠婚葬祭や道路管理など共同生活の維持が困難になった過疎地域(限界集落)は、いまや全国で3万を超えるといわれるが、狸森はその「日本農業・農村の典型、悪い意味での先進地」(本書「あとがき」から)であるという。著者はここに至った理由を考え思い当たるが、その行末を見通せず、それを超える道はないかと模索する。
読む者にとっては深い共感と共苦、どこか懐かしく寂しさも入り混じる、狸森と日本の集落の「生命史」(本書解説Ⅰから)といえる著作である。日本の農業・農村を考えるために、ぜひ手に取りたい一冊である。