沖縄文学には、かすかな声やかたちをとっていない記憶、言葉をもたない存在の気配などが宿っている。表現者たちはどのようにそのざわめきにふれ、言語化しがたい戦争・差別・暴力・支配などの記憶を書いてきたのか。性暴力の被害者、被爆者ほか周縁化されてきた人たちの声は、文学のなかにどのように響いているのか。そして、読み手はその声を聞き取ることができるのか。
大城立裕、大江健三郎、目取真俊、崎山多美、仲程昌徳たちのテクストや実践を取り上げ、アメリカ軍による暴力、在沖被爆者などの記憶や声に着目する。さらに、沖縄の教科書や、日本語を「かきまぜる」表現者の文体戦略にも焦点を当て、沖縄文学がどのように教えられてきたかをたどり、日本語/日本文学のありようも照らし出す。
沖縄文学に息づく「ざわめき」に耳を澄まし、テクストとの共鳴から読むことの可能性を探る。
【目次】
はじめに
序 章 〈他なる生〉を身に帯びる
1 砂の言葉を読む
2 沖縄文学と〈他なる生〉
3 本書の概要
第1章 沖縄を描く言葉の探求――沖縄近代文学と〈しまくとぅば〉
1 表現言語の底流に潜む響き
2 「琉球語」の位置づけ――山城正忠「九年母(くねんぼ)」
3 逃げ場としての「辻」――池宮城積宝「奥間巡査」
4 〈沖縄〉の不在――久志富佐子・山之口貘
第2章 戦争の記憶に向き合う読みの実践
1 戦争の記憶を編むこと
2 仲程昌徳という存在
3 『沖縄の戦記』が引いた線
4 『手記』の空白と「日記」の繰り返し
5 戦争の記憶を読むこと
第3章 「日本人」の変容の可能性に向けて――大江健三郎『沖縄ノート』
1 『沖縄ノート』が提示した問い
2 「日本人」を問うこと
3 広島から沖縄へ
4 加害の認識にとどまることなく
5 死者を身のうちに宿す
第4章 沖縄の被爆者をめぐる記憶と記録
1 沖縄の被爆者という存在
2 蜂谷道彦『ヒロシマ日記』に潜む声
3 大牟田稔「沖縄の被爆者たち」が示す空白
4 福地曠昭編著『沖縄の被爆者』の訴え
第5章 沖縄・海洋博の爪痕――大城立裕『華々しき宴のあとに』
1 海洋博と大城立裕
2 変容していく島
3 観光という〈戦争〉
4 ヤマトンチュがもたらした影響
5 切り売りされる文化
6 宴のあと
第6章 〈沖縄〉を教える――沖縄県の国語科副読本…