明治期に西欧的な文体が導入されるにつれて、作家たちは文学をどのように変化させ、新しい文体と物語をどのように創造しようとしたのか。
旧来の文体を解体して新しい型を生み出す過程を、二葉亭四迷や森鴎外などを題材に「小説を書くということ」「記憶を語るということ」という視角から分析する。
さらに、「言葉を受け取るということ」と部を立てて読書行為も丁寧に腑分けする。
新しい文体と物語が誕生した時代をとらえ、表現することと読むこと、聴くことに目を向けて近代文学の始まりを問い直す著者の代表作。
【目次】
序 章 物語としての文体/文体としての物語
1 ジャンルの記憶
2 手法の露呈と表現の脱領属化
第1部 小説を書くということ
第1章 文体としての自己意識――『浮雲』の主人公
1 主人公の設置とジャンルの転換
2 立身出世型主人公の転倒
3 「反主人公(ルビ:アンチ・ヒーロー)」の誕生
4 内的対話としての自己意識
5 言葉を対象化するもう一つの言葉
第2章 『浮雲』における物語と文体
1 科白と地の文の葛藤
2 会話場面と物語の展開
3 自己認識の幻想性
4 メタ小説としての『浮雲』
5 内在的読者を生成する文体
6 相互葛藤的な文体の自己差異化
第3章 表現の理論/物語の論理
1 ベリンスキーと二葉亭
2 「只一の感動」の理論的可能性
3 ヘーゲルと朱子学の対峙
4 「霊感」と「理気」のはざまで
5 「偏執の気」としての文学
第2部 記憶を語るということ
第4章 結末への意志/結末の裏切り――嵯峨の屋おむろにおける物語と表現
1 独白体の発見
2 作中人物の内と外
3 語り手の位置の乖離
4 物語の結末と文体
5 傍観者の位置
6 物語の生成力と文体
第5章 結末からの物語――「舞姫」における一人称
1 自我構造の多層性
2 自己認識の複数性
3 外化した自己と内化した自己とのはざまで
4 他者の言葉との対峙
第6章 人称的世界の生成――鴎外ドイツ三部作における文体と構成
1 人称的自我の選択
2 偏りとしての個別性
3 傍観者的一人称の可能性と限界
第3部 他者と関わるということ
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