弱さに向きあい、弱さに学ぶ
育児や介護から医療や福祉まで、少子高齢化を背景に広がるケアの議論。非対称な関係のなかで信頼を構築する方法とは? 誰もが責任を担い誰もが依存できる社会とは? 現場のリアルを最重要の論点で整理した入門書。
――本書の執筆者一覧
宮坂道夫 西村ユミ 榊原哲也 熊谷晋一郎 伊藤亜紗 三井さよ 村上靖彦 冨岡薫 相馬直子 武井麻子 永森志織 油田優衣 大塚類 東村知子 山田あすか 田口陽子 井口高志 阿古真理 小川公代 池田弘乃 広井良典
――はじめにより
子どもや高齢者、障害者など、一部の人々だけがケアを必要としているとみなされがちだが、実際は、すべての人々が膨大な人やモノからケアを受け取っている。ケアなしに生きていくことはできないのだ。そこから、ケアは相互に依存しあうことで成り立っているこの社会の前提条件であることが見えてくる。したがってケアは、万人が等しくそれを担う責任とそれを受け取る権利を分けもつべきものである。
しかし現実には、一部の人にケアの責任が集中したり、一部の人が十分なケアを受け取れていなかったりする状況がある。介護や育児などのケアを誰が担うかという課題や、生きづらい思いをしている人たち、病いや障害をもった人々、多様な状態にある人々との共生という課題が顕在化するのはそれゆえである。
ケアが万人に等しく担われ、また受け取られる権利となる基盤をつくるには、ケアする者/される者という二元論にもとづいたケア観を、別様に転換する必要がある。いわばケアのパラダイムチェンジである。それには、ケアを根本から問いなおす議論が必要になるだろう。