「折れる」と「折る」の対のように、他動詞よりも自動詞の方が形態的に有標な対は逆使役型と見なされる。逆使役構文の述部を形成するのに用いられる形態素の統語論・意味論上の用法の広がりと形式的な変異に関する論考を集めた論文集。
■「前書き」より
本書は、逆使役構文の述部を形成するのに用いられる形態素の統語論・意味論上の用法の広がりと形式的な変異に関する論考を集めた論文集である。
逆使役(anticausative)は自他動詞対の類型論的研究で提案された概念であり(Nedjalkov and Silntsky 1973)、対応する他動詞よりも形態的に有標な自動詞を指すものである。日本語を例にとれば、「開く/ak-u/・開ける/ake-ru/」のよ
うな自動詞よりも他動詞の方が形態的に有標な対は使役型、「折れる/ore-ru・折る/or-u/」のような他動詞よりも自動詞の方が形態的に有標な対は逆使役型と見なされる。
■目次
日本語諸変種における対象物の結果状態の表現––逆使役構文、テアル、非情の受身––(白岩広行)
北海道方言「ラサル」の非対格使役分析(大野公裕)
青森県津軽方言の接尾辞「サル」の諸用法とその起源––今別町方言を例に––(大槻知世)
フィンランド語における再帰動詞による逆使役化について(佐久間淳一)
リトアニア語の自動詞から作られる有再帰接辞自動詞の意味領域(櫻井映子/Giedrė JUNČYTĖ(ギエドレ・ユンチーテ))
北海道方言におけるサ抜き現象(佐々木冠)
北海道方言自発述語における連結子音のゆれ(佐々木冠)