英語を「母語話者のように話す」ことから、「自分の英語で伝える」ことへ。国際英語論とAIを軸に、学習者が自分の英語を肯定し、自信をもって使える力を育てる授業実践と評価のあり方を具体的に提案。これからの英語教育のために。
■「はしがき」より
「国際英語論(World Englishes, Global English, English as a Lingua Francaなど)」と聞くと、世界に広がる多様な英語への理解や寛容性を育む側面が注目されがちです。しかし教育の現場に目を向けると、学習者自身が用いる「学習段階の英語」そのものを、英語の正当な一形態として捉える視点こそ、大きな意味を持ちます。この視点に立てば、学習者の「自分の英語(My English)」もまた世界に存在する英語の1つであり、国際的に伝わるのであれば、自信と誇りをもって積極的に使うべきだという考え方が自然に芽生えます。結果として、「母語話者のように話さなければならない」という過度な不安から解放され、使用意欲が高まり、そのこと自体が学習を後押しします。
ところが実際の教育現場では、世界の多様な英語に触れる活動や、海外学習者とのオンライン交流など、準備に負担のかかる実践に焦点が寄りがちで、「日常の授業」でどのように国際英語論を活かすかという視点が十分に共有されているとは言えません。むしろ、国際英語論の観点を取り入れた授業実践は、学習者の「英語運用能力」をどのように伸ばし得るのか、という点に関して、具体的な知見や方法こそ求められているのではないでしょうか。
さらに、学習者が「自分の英語」に自信と誇りをもち、何より「伝わること」を重視するという国際英語論の姿勢は、生成AIを活用した英語学習と極めて相性がよいことが明らかになりつつあります。とはいえ、「では具体的に、国際英語論の視点から生成AIをどのように活用すればよいのか」「正確性より汎用性(伝わること)を重んじる教育観のもとで、評価はどう設計すればよいのか」といった問いには、まだ整理が必要です。本書は、こうした疑問に応え、国際英語論の知見を日本の日常の授業にどのように落とし込めるのかを、具体的に提案することを目的として企画されました。