• 発売日:2025/12/12
  • 出版社:法藏館
  • ISBN:9784831860750

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『歎異抄』成立の謎

『歎異抄』成立の謎

通常価格 3,300 円(税込)
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商品説明
多くの著名人が推奨し、日本で最もよく読まれているという仏教書『歎異抄』。
「善人なほもて往生をとぐ。いはんや悪人をや」という有名な「悪人正機」の一文が記された『歎異抄』は、親鸞直弟子の唯円が、師の親鸞から直接聞いた言葉を、親鸞没後に記したものである、というのが現在の常識である。

この常識は正しいのか。

どの宗教にも開祖の言葉を集めたとされる聖典があるように、浄土真宗にもそうしたものがいくつも存在する。だが『歎異抄』以外のそうした書物は、現代に至るまでにどれも本当に親鸞の言葉なのかどうかが疑われ、否定的に扱われてきた。親鸞の言説の集成とされる諸本がどれも厚遇されていない中で、『歎異抄』は特異な地位を占める。なぜそのような事態となったのか。まずは『歎異抄』が親鸞の言葉を記録しているという前提を離れて、その成立事情に迫ってみたい。

【目次】
1 『歎異抄』という親鸞伝
2 法然系諸流の中で
3 『歎異抄』の文体
4 穢土に顕現する如来
5 生き如来信仰の変質
6 中世親鸞門流の「聖教」
7 親鸞の秘伝を記す書物群の成立
8 近世的学問・教育の進展
9 「正義」樹立への道程
10 知識人にとっての『歎異抄』
11 虚実皮膜の祖師信仰
目次
凡例
本願寺歴代住職

1 『歎異抄』という親鸞伝
 親鸞資料としての『歎異抄』の特殊性
 『口伝鈔』と『歎異抄』の書承関係
 『歎異抄』から『口伝鈔』か、『口伝鈔』から『歎異抄』か
 覚如著作群の利用
 「唯円」と覚如伝
 行状型と言説型
 法然伝の場合
 親鸞伝という教義書

2 法然系諸流の中で
 『唯信鈔』と『唯信鈔文意』
 親鸞の書簡集
 親鸞のみが知る言葉
 誓願と名号の関係
 覚如制作の法然伝
 学問の価値
 流罪記録

3 『歎異抄』の文体
 漢字リテラシーと教義理解
 親鸞の理念と実践
 覚如・存覚の教義書新作
 スローガンのような言葉
 拝聴・拝見・諷誦
 固有名詞による自称

4 穢土に顕現する如来
 生き如来信仰
 夢の善導
 本地と垂迹
 親鸞没後の生き如来たち
 初期真宗の制禁
 一遍伝・他阿真教伝
 浄土宗各派の祖師伝
 人民たるわれら
 口称念仏すら難しい人々

5 生き如来信仰の変質
 肖像画を礼拝する
 本尊の多様性
 生き如来の絞り込み
 如来と親鸞の役割分担
 拝まれる蓮如
 危機に顕れる如来
 善知識から御門主へ
 本願寺住職は仏の血筋
 芝居小屋の生き如来たち

6 中世親鸞門流の「聖教」
 教義書の秘匿
 本願寺の財産
 存覚『浄典目録』
 実悟『聖教目録聞書』
 雑纂・羅列の聖教目録
 蓮如のしらばくれ

7 親鸞の秘伝を記す書物群の成立
 『浄土法門見聞集』
 『因果鈔』
 『心血脈鈔』
 『親鸞聖人御因縁秘伝鈔』
 聞書型・物語型の教義書
 如信の登場
 「本願寺歴代」の認識
 「親鸞の秘伝」はいつ生まれたか
 地方人の学問希求
 蓮如前夜の本願寺
 『口伝鈔』と『歎異抄』

8 近世的学問・教育の進展
 東西両本願寺派・高田派
 仏光寺派
 興正派
 木辺派・三門徒諸派
 独自教学の不在
 浄土宗・時宗の学問所
 学問所と「御伝授の家」
 真宗教義書の出版
 「正しい教義書」の確定
 学問の広がり

9 「正義」樹立への道程
 「御伝授の家」の聖教目録
 西本願寺の学問隆盛
 一揆の寺の平和対応
 東派における「仮名聖教」重視
 徳川光圀と東本願寺
 高田派親鸞伝の衝撃
 親鸞を知りたくば東国を見よ
 浄土宗との差異化
 『安心決定鈔』の凋落
 浄土宗西山派の動向

10 知識人にとっての『歎異抄』
 全国的な教学論争
 自力性の徹底排除
 文証主義と『教行信証』第一主義
 引用しやすい「聖教」
 史料批判の欠如
 『歎異抄』作者の探索
 唯円旧跡の復興
 「平太郎の弟平次郎」から「河和田唯円」へ
 学界スターの如信説
 唯円説の近代性
 絶対他力という四字熟語
 宗門人主導の『歎異抄』享受

11 虚実皮膜の祖師信仰
 町や村の生き如来
 学僧の生き如来信仰
 唱えられる「改悔文」
 耳と口による学びの特徴
 読書による学びの広がり
 識字をめぐる二つの文化
 愚かな狂信者たち
 口称念仏への冷淡さ
 祖師伝は舞台、浄土が楽屋
 祖師伝の役割

使用テキスト
参考文献
掲載図版一覧
書名索引

あとがき
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