本書は、2005年に完了する欧州金融市場統合計画を支える欧州会計制度の改革行動に加盟国ドイツが組入れられたことを機縁に、ドイツ商法会計における戦略的な二元的対応を明らかにしたものである。本書の構成と各章の概要は以下のとおりである。
序章と第1章では、EUがIAS/IFRSを適用するに至った経済社会的な原因を分析すると同時に、2005年の金融市場完全統合を支えるIAS/IFRSの適用と欧州会計制度の改革プランにドイツ会計が組入れられたことを契機に、ドイツ商法会計が取り組んだ戦略的な二元的対応が明らかにされている。
第2章では、EU会計をめぐるいわゆる2005年問題が分析されている。世界に先駆けてIAS/IFRSを承認し導入したEUが日本およびカナダをはじめ欧州以外の国から参入した域内証券市場に上場する企業の決算書と、IAS/IFRSとの適合性について、EU委員会・欧州証券規制当局委員会(CESR)による検証・審査を開始しており、EUによるIAS/IFRSの適用をめぐって生じた会計上の問題とその意義が明らかにされている。
第3章では、ドイツの「会計法改革法」が分析され、加盟国に対する「IAS適用命令」、3つの欧州会計指令(公正価値指令、会計現代化指令、規模基準値修正指令)のドイツ会計法への転換の意義が明らかにされている。
第4章では、ドイツ商法会計の一般規範たる正規の簿記の諸原則(GoB)について、最新の3つの代表的な学説(バイセ、ベェトゲ、バルヴィーザー)が分析される。
第5章では、民間基準設定機関により設定された会計基準をドイツ商法体系に組入れる場合に、ドイツ連邦議会により制定される法律規範と私的機関による会計基準との混合的法体系が生じる結果、私的機関による会計基準が法律規範として容認されるか否かが国家主権・議会制民主主義の大原則から問題になる。この場合、国家・行政機関が会計基準に国家による支持と権威を付与するならば、民間機関により設定された会計基準は法的規範の枠組みに含まれるという論点について2つの学説が分析され、その会計的意義が明らかにされている。
第6章では、金融市場統合を支えるドイツ基準設定審議会による「概念フレームワーク公開草案」が分析され、ドイツ会計とIAS/IFRSとの調和化を目指す背景と意義が明らかにされている。