風立ちてカーテン揺れぬ 青き空、蒼き紫陽花、あおめく夏よ
── 衒わない日常の歌にはたしかな生のリズムがあって、下句に弾むユーモアや意気が鮮やかだ。
農作業の歌にも闘病の歌にも、颯々と自分の足で立っている潔さがある。(帯・米川千嘉子)
小綬鶏の初鳴きちっとくぇと野を駈けるわれはたんとと蜀黍を蒔く
草畑にラッパ飲みするぬるき水 青空もともに咽をはしる
蛸にふれ海鼠つかみてにっとする孫も水を得た小さな魚
不夜城のチッソの灯り対岸を美しと想いし五歳のわれは
故も無く戦禍に消える命あり五錠でつなぐわが命あり
夕陽うけ山のねぐらへ飛ぶ鶴の影絵ごときも杳き日のこと