一人の人生に
たった一つ与えられた
身体を見つめ、考え、経験を積み、
思いを深めていくその折節に生まれた言葉が、
一行の歌となって杭のように歌集に刻まれている
東 直子(歌人・小説家)
【歌集より】
次の世もおんなでありたし生と死の境に赤い口紅を置く
母となることなく生きてタクシーの深夜割増料金表示
一度きり抱いてくれたら砂になる世界でいちばんきれいな砂に
グローバル時代の共通言語もて人はふたたびバベルに挑む
あこがれを空に放ちし日もありきテンカウント待つのみの敗者に
水の無い世界に至る入口に水の墓碑あり氷柱と呼ばむ