寿命があればもっと老いたい。短歌を杖として。
五七五七七の短歌は、小舟。
千三百年のあいだ、日本人が魂を乗せてきた不朽の舟である。
二〇二二年から二〇二五年の三八〇首を収めた第十七歌集。
著者は現在82歳。本集は80歳の前後4年の作品となる。
年齢的には「老い」の歌であるが、加齢は人間の発展の一過程であると考え、著者は自身の短歌に新たな地平を切り開き続けている。
郷里宮崎の自然や長年研究を続けて来た若山牧水について、また深刻な問題に直面し揺れ動く世界や日本の現実を、短歌という「小舟」で歌いあげる第17歌集。
〈収録歌より〉
今日会ひし人の心と言の葉を籠(こ)むる小箱をわが心(しん)にもつ
死者はみな遺し来しものを忘れぬと茎立てて言ふ曼珠沙華の赤
声をもて抱(だ)くこと得意とする我は今日三人を抱きしめにけり
人殺す無人兵器を人造り人が操る 人はわりなし
過ぎ去りし八十年はどこにあるげんげんげんげん幻世(げんせ)か現世