フレイル……。健康と病気のあいだに潜む「虚弱」という意味らしい。
それこそ危うい現代を象徴する言葉なのである。そうか、虚弱なのか。
何かが足らないのではなく、虚弱な空気に覆われていたのか、と今さら
に省みるばかりである。しかしながら、「虚弱な」整形外科医の歌は案
外にしぶとく、また熱い生命力を放つもののようであった。
佐伯裕子(解説)
【歌集より】
探してた鍵を見つけたそれでもね扉はすでにこの国にない
我になれぬわたしの影が夕暮れの風にほどけて路地へと消えた
もう夏は後ろ姿の海街に「焼き蛤」ののぼりはためく
空っぽのプールの底を這っている青い海月が見えるというの?
色だけで選ぶ〈彩りサラダ〉かな夜のファミマは光りすぎてる
太陽の届かぬ闇へエウロパの放つ光をガリレオは見つ