ペンチレース(卓上旋盤)は高度経済成長期に町工場レベルで活躍した工作機械です。その普及と活躍にもかかわらず工作機械としては日陰の存在だったため(NC 旋盤が時代の最先端だっ た)、文献など書物の記録として残されることはありませんでした。現在でも普通旋盤に関する書籍は出版されているものの、卓上旋盤について書かれたものはありません。そんなペンチ レースとは何だったのか(技術および存在意義について)を探る唯一の書籍となるものです。 本書ではペンチレースを「高度経済成長期に量産用として特化された卓上旋盤」として認識 し、全三章で議論を構成し次の2つのことを達成します。1)ペンチレースの歴史的意義を再 確認すること、2)ペンチレースの技術を再発掘すること。前者は、取材と共に文献も紐解き ながら、昭和の高度経済成長期の中で発展した工作機械界におけるペンチレースの登場と経緯 を明らかにします。中小企業不要論の風潮が強かった経済界では昭和 44 年の経済政策の転換を 機に風向きが変わり、ペンチレースを多く使用していたような町工場が伸張していく様子はま さにこの時代の製造現場のダイナミズムです。後者では取材を中心とし、現在実働している 「プロ用産業機械」としてのペンチレースの構造や使用例を具体的に提示し、その機構や技術を明らかにします。