本書は、長年、技術科教員として教壇に立ってきた筆者が、中学生のいじめや不登校の背景にある学校生活のストレスに着目し、その改善の鍵として「フロー体験」と「コミュニケーション」を再評価するものである。フロー体験とは、活動に深く没入し、時間を忘れるほど集中する最適経験であり、強い充実感と自己の能力の発揮を伴う。著者は、この体験を生徒同士が共有することが、仲間意識を育て、学校生活をより豊かにし、いじめや不登校の抑止につながると考える。
しかし、現代の学校では、授業・部活動・校則などが生徒の納得を得られず、矛盾やストレスを生み出している。テスト中心の授業や説明できない校則、人権侵害的な罰則、形骸化した行事は、生徒の不満を蓄積し、いじめや不登校の遠因となる。特に「不登校」という言葉は外部からの観察による分類であり、本人の強い意思による「登校拒否」と区別されるべきだと著者は指摘する。学校環境が生徒の主体性を奪い、受験圧力が集団活動の楽しさを奪うことで、生徒は分断され、無気力化し、学校全体が閉塞感に包まれていく。
こうした状況に対し、著者は教師が生徒の願いに寄り添い、豊かな活動の場を学校に増やすことを提案する。特に行事は、生徒が感動や喜びを共有できる貴重な場であり、フロー体験との親和性が高い。行事での没入体験はコミュニケーションを活性化し、生徒同士の結びつきを強める。実際に合唱祭で指揮者を務めた生徒の例では、仲間と協力して目標を達成した経験が学級の雰囲気や授業への姿勢に良い影響をもたらしたことが示される。
不登校やいじめの発生を抑え、ストレスの少ない楽しい学級生活を創造するには、信頼関係に基づく仲間意識が不可欠である。本書では、その実践的な可能性を探ることを目的とする。