生家に行き着いたときにはもう遅かった
夏はとっくに過ぎ去っていた
近所との境を立ち塞いでいたブロック塀さえない
我々の土地は更地となり
誰の地でもない顔をしていた
春が来るたびに雑草の新芽がいっせいに芽吹くので
父が、日なが草むしりしていた庭もなく
物騒になっていく世の中から独り身を隠すため
母が、新調したばかりの玄関の引き戸もなかった
(「解体」より)
ここ数年、また詩を書いている。ノートの端やiPadのドキュメント、スマホのメモに。レシートの裏や付箋の余白にまで。そんなことをしていたら、ちょうど実家を取り壊すことになった。家族の誰一人解体に立ち合えず、跡地さえ訪れることが叶わない地が詩の題材に加わった。
私にとっては三冊目の詩集だ。二冊目から二十年も経ってしまった。二冊目以降、同人誌や新聞に掲載されたにもかかわらず忘れていた詩もあった。もう忘れてしまわないようにという自戒も込めて、その中から四編を真ん中のパートに入れた。そのほかは日常の中でただ書かれ、どこかにバラバラに置かれていた詩たちだ。(あとがきより)