偽りの国書を書いた男が、最後まで貫いたものとは
徳川幕府を揺るがした国書偽造事件。
国境の島で朝鮮通信使を迎え、朝鮮・漢城の地を踏み、流刑先の盛岡で清酒を伝えたひとりの禅僧の数奇な生涯。
筑前国宗像の農家に生まれた規伯玄方は十二で出家し、対馬藩宗家の外交僧・景轍玄蘇に弟子入りする。日朝交易の要所・対馬では、豊臣秀吉の死後、朝鮮出兵で断絶した国交の回復が急がれていた。漢学の才と人の機微を読む力を買われた玄方は、朝鮮通信使を迎える一方、被虜の探索にも奔走する。そのなかには、かつて被虜として連れてこられ、逃亡を図るなかで玄方と出会った朝鮮人陶工・イジュンもいた。彼を祖国へ帰したいとの思いを胸に、玄方は柳川家の家臣、松尾七右衛門とともに被虜の帰還に奔走する。だが、日朝外交を支えてきた宗家と柳川家の関係が揺らぎ始め、やがて国書をめぐる一大事件へ――。
史実の空白に大胆な発想を重ね、歴史の本流に呑まれた人間の生きざまを描く。
宗像、対馬、博多、京都、駿府、盛岡、アイヌ、朝鮮各地を舞台に描く歴史綺譚。