日本グラフィック・メディスン協会 会誌 第3号
本号では、グラフィック・メディスンをめぐる現在地を、研究・実践・表現の各側面から整理し、その社会的接続可能性を検討する。
■ 特集
「患者の語りは、どこまで社会を動かせるか」
— GM と Patient Experience Data(PED)が出会う地点 —
医療において長らく中心に置かれてきたエビデンスに対し、患者の経験や語りはどのように位置づけられてきたのか。
本特集では、近年国際的に注目されるPatient Experience Data(PED)を手がかりに、患者の経験を意思決定の文脈に接続するための枠組みを検討する。
グラフィック・メディスンが担ってきた、当事者の経験を視覚的・ナラティブに可視化する実践は、共感の形成にとどまらず、社会における判断や説明可能性へと接続し得るのか。
本号では、この実践とPEDという枠組みを並置し、両者の関係を整理することで、これまで必ずしも交差してこなかった領域の接続可能性を検討する。特に、患者経験を「可視化する実践」と「意思決定に接続する枠組み」という異なる機能の関係性を再定義する点に、本号の特徴がある。
■ 主な内容
・精神疾患の当事者経験をアニメーション表現として検討する試み
・医療マンガにおける読者設計と倫理的配慮に関する実践的知見
・マンガを活用した医療者教育の方法論とワークショップ報告
・グラフィック・メディスンの理論・実践・メディア特性に関する整理
■ 本号の位置づけ
グラフィック・メディスンを、単なる表現領域ではなく、医療・教育・社会を横断する実践的枠組みとして捉え直すことを目的とする。
ナラティブの共有と、意思決定への接続という二つの視点を架橋することで、患者経験の扱い方に新たな基準を提示する。
研究者、医療従事者、教育関係者、および患者経験の扱いに関心を持つ読者に向けた一冊。