明和六年(1769)の江戸を起点とする、和歌の遊戯的な形式である、狂歌。その流行は、またたくまに大きなうねりとなる。狂歌の大衆化を背景に「江戸狂歌人」たちが生み出したもののひとつが、本書のテーマ、狂歌摺物だ。
狂歌人たちは毎年正月などにあいさつを兼ねて自詠、あるいは自身の作も含む数人のなかまの狂歌を載せ、多くは浮世絵師らによる絵を添えた印刷物を制作、交換しあった。これが通称「摺物」である。
本書の各章で論じる狂歌摺物は、狂歌人たちが正月に合わせて自身の詠を自費で板行したものが中心となる。その作は、狂歌なかまら、手渡した相手にみずからの詠を披露するだけでなく、デザインや趣向も含めておのれの知識人としての着眼点のおもしろさ、趣味のよさを誇示する媒体でもあった。
近世日本において広く共有された知の世界をあざやかに見せてくれる狂歌摺物。その知的世界にさらにわけ入るための全9章。
執筆は、浅野秀剛、John T. Carpenter、馬場淳子、小林ふみ子、牧野悟資、Mary Redfern、櫻井貴基、山際真穂、Daan Kok。
狂歌摺物という文化的所産にどうたち向かうのか。江戸時代研究必携書。フルカラー、本書所論狂歌摺物シリーズ一覧付き。