災害情報学の挑戦

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    商品説明
     首都直下地震や南海トラフ地震などの災害リスクが高まり、気象の極端化が進行する現代。災害情報の重要性が増す一方で、「災害情報学」は、いまだ社会の要請に応え切れていないように見える。そこには、「インフォメーション」の水準でのみそのありかたを検討する短絡があったのではないか。
     このような問題意識を持ち、コミュニケーションの根本から「災害情報学」を彫琢し直すことを目的として、本書が編まれた。キーワードは、「リアリティ」。“いのちを輝かせるために”という防災哲学に裏打ちされた、理論と実践を結晶させる愚直な挑戦だ。
     今一度、地球という惑星の住人であることに思いを馳せて、その時空間のスケールで想像してみよう。「災害と人類」の歴史は、数百万年を数えることになる。しかし、「防災と人類」では、どうだろうか。脊髄反射的な危険回避のふるまいは、もちろん、ホモ・サピエンスの時代よりもずっと前から存在していたのだろう。しかし、事象の因果を予測して計画を為す防災・減災事業の多くが、近代社会になって駆動し始めたことに気付くはずだ。「防災」は、科学・技術と密接に結び付いた、きわめて近代合理主義的な営みなのだ。
     それでは、真正なる「防災」の道行きとは、一体どのようなものなのだろうか。ここではひとつだけアングルを提示しておこう。われわれは、「いま」というときを、未来の目的のために費消されるものとして措定することに慣れ切ってしまっている。進学のために、就職のために、出世のために、成功のために、「いま」を我慢して、「あす」を夢見る。現在の課題や不足を声高に叫び、改善を求め、対策を促し、完遂することを鼓舞し、そうして結局、目の前にいる人をあるがままに見ることができなくなっていく。「いまは忙しい」、「あなたに付き合っている暇などない」。「そんな話、あとにしてくれ」。「合格したら考えてあげる」。「昇進したら、きっと……」。社会が見ているのは、立てられた「目標」であり、その進捗を示す「数値」のほうである。
     流行りの防災・減災の取り組みも、また同じではないだろうか。いや、もっと極端かもしれない。激烈な「想定」を提示し、現時の課題と不足をあげつらい、リスク情報のシャワーで包囲して取り組みを要請する。未来の幸福を追求するためには、現時の不幸を一身に引き受けなければならない。この「脅しの防災」の身構えは、果たして真正だと言えるだろうか。
     自己や社会を解放したコンサマトリー(現時充足的)な「こころある道」を求めて、本書では、通時的・共時的な「災害観」・「世界観」・「死生観」に配視していく。生のグルントに根差した防災の哲学を探求する「災害情報学」の最前線に立って、次代を切り拓くための旅に出よう。
    目次
    序章 災害情報学の射程

    第1章 災害・時間・情報
     1 現代版“ダモクレスの剣”
     2 社会現象としての自然災害
     3 ハザードと猶予時間の諸相 (1)地震
     4 ハザードと猶予時間の諸相 (2)津波
     5 ハザードと猶予時間の諸相 (3)火山
     6 ハザードと猶予時間の諸相 (4)その他
     7 失われた〈時間〉を求めて

    第2章 リアリティの視座
     1 災害情報のパースペクティブ
     2 知と信の乖離
     3 状報・情報とリアリティ
     4 東日本大震災のケース
     5 危機対応時におけるリアリティ
     6 メッセージとエンパシー
     7 情報のオーナーシップ
     8 補遺 リアリティの三層構造

    第3章 リアリティの展開
     1 津波警報をめぐるリアリティ(予備調査から)
     2 津波警報をめぐるリアリティ(縦断調査から)
     3 “復興支援ソング”のポテンシャリティ
     4 救命用ホイッスルをめぐるリアリティ
     5 災害漫画の可能性に関する考察
     6 災害報道における遺体描写のリアリティ

    第4章 避難行動をめぐるリアリティ
     1 和歌山県北部
     2 九州北部豪雨の概要とコンティンジェンシー
     3 全員無事集落への着眼
     4 人々の動態類型
     5 余裕避難の提唱

    第5章 災害報道のコンピテンシー
     1 調査の手続き
     2 調査の結果(概要)
     3 分析の結果(詳報)
     4 成果のインプリケーション

    第6章 生のグルントに根をおろす
     1 「かもとりごんべえ」と災害観
     2 計画的に、計画しない
     3 連携と連帯
     4 リスボン地震の教え
     5 防災と人生

    終章 災害情報学の冒険
     想定外・想定内/特殊性・普遍性・偶有性/確率論・決定論/消費・情報化・蕩尽/偶有性2.0・共進化/生のグルントと災害情報学の未来

    あとがき
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