契約利益調整論拾遺

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商品説明
 我々は、消費者としては、日常あまり契約を意識することは少ない。それでも、スーパーやコンビニ、ネットで買い物する場合も、電車に乗るような場合も、我々は契約を結んでいる。その契約の細かい内容は、店の側、電鉄会社の側が「約款」という形で決めていて、我々がその内容について店側と話をすることは少ない。
 そんな我々でも契約を意識することが人生の中でも生じる。
 たとえば、家やマンションを買おうとする場合、買うのでなくても、所有者から借りる場合には、仲介業者から契約書を出されて、おのずから意識することになる。
 そうして、例えば、マンションを買おうとする場合には、どのような間取りのマンションにするか、入居はいつになるか、代金はいくらか、入居までに改装することはできるか、といったことを詰めて行く。場合によっては、交渉により代金額を下げてもらうことができるかもしれない。このような「契約締結交渉」を経て、契約は成立し、その契約によって債権債務関係が生じたあと、その債務が契約どおりに履行されて、ひとまず契約は終了する。先のマンションの売買の例だと、買主は代金を売主に支払い、売主は買主に住戸を引き渡し、登記名義を買主に移転する。このような順当なケースではなく、どちらかの当事者が債務を履行しない場合、つまり、売主が住戸を引き渡さないとか、買主が代金を払わないなどという場合は、典型的な債務不履行の場合として、裁判所の力を借りて契約通りの履行をさせたり、損害賠償の請求をしたり、契約を解除したりして、その始末をつける。
 このような典型的に考えられる履行ケース・不履行ケースの他にも様々な局面で様々なトラブルが生じる。契約締結交渉途中でどちらかの当事者が離脱する場合もあろう。契約が成立していない以上、離脱するのは自由だけど、契約締結に至るという信頼がもっともな場合まで、その離脱の自由を認めていいのか。損害賠償を支払うことが当事者の利益衡量から正当な場合もあるのではないか。
 また、契約が成立しても、履行までの間にさまざまな予想外のトラブルが生じる。お互いに帰責事由がないにも関わらず履行コストが上昇して契約通りの対価が支払われてもとても割に合わない場合も生じる。不動産売買でも、不動産市況が激変して、市場価格が騰貴しているのに、契約価額で引き渡さなければならないとするのも衡平に欠けると感じられる場合もあろう。
 さらに、トラブルなく契約が履行し、終了したと思っていても、同じ規模、仕様の同じ棟のマンション住戸を値段を下げて売り始めるのは、すでに購入したマンション所有者の保有価値を損なうことにならないか。
 このようにして、契約当事者の利益は様々な態様で影響を受けていく。
 本書は、そのような契約利益は当事者間でどのように調整され、衡平が図られるべきかを論じるものである。
目次
はしがき
序に代えて――本書解題

第1部 契約成立過程の関係調整
 第1章 アメリカ契約法における「約束的禁反言」理論の発展史
   緒説
   第1節 約束的禁反言の法理の歴史
   第2節 約束的禁反言の法理の現代における適用

 第2章 アメリカ契約法における「約束的禁反言」理論
     1980年代の展開と契約交渉破棄責任
   緒説
   第1節 契約類型による判例概観
   第2節 契約締結交渉破棄責任と約束的禁反言の法理
   第3節 判例研究

 第3章 契約と約束の諸相
   第1節 改正前民法下における消費貸借契約における「合意」の意義――中間合意論のための予備的習作
   第2節 不動産販売価格維持約束と「セールストーク」の拘束力――「紳士協定」裁判例を手掛かりとして――
   第3節 判例研究

第2部 契約成立後及び契約終了後の関係調整
 第1章 素描・効果論から見た契約法の分化傾向 ――契約解放規範と契約維持規範の錯綜――
   第1節 緒説
   第2節 契約解放規範と契約維持・調整規範の変容
   第3節 国際統一契約法における契約維持規範の動向
   第4節 消費者契約と企業間契約における契約解放規範と契約維持規範の対比
   小括

 第2章 不動産売買契約終了後の不動産業者による値引き販売 ――バブル経済崩壊と契約〈試論的一素描〉――
   第1節 緒説
   第2節 バブル経済の発生および崩壊過程
   第3節 報道に現れたバブル崩壊後の法律問題
   第4節 不動産の値引き販売問題
   小括

 第3章 不動産売買契約終了後の値引き販売と価値保持義務――東京地判平成15・2・3判時1813号43頁に至るまで――
   第1節 緒説
   第2節 値下げ販売事例の流れ
   第3節 値下げ販売事例の一般的な論点
   第4節 説明義務違反の主張への対応
   第5節 住宅・都市整備公団事例(⑥,⑦,⑧,⑩事件)の特色と再交渉義務論
   小括

 第4章 判例研究
  1 Krell v. Henry
  2 貨幣価値の下落と軍事郵便貯金金額の払戻
  3 土地賃貸借契約における賃料の自動改訂特約の効力
  4 ゴルフクラブ入会契約締結後のゴルフ場ののり面の崩壊という事情の変更とゴルフ場経営会社の予見可能性及び帰責事由
  5 暴力団関係者入居による住環境悪化を理由とする損害賠償請求
  6 住宅・都市整備公団値下げ販売

第3部 補論
  1 モデル法の母としてのアメリカ法 ――UCCとリステイトメントの来し方・行く末――
   第1節 はじめに
   第2節 リステイトメント・統一商事法典成立史
   第3節 UCC とリステイトメント ――その人物群像と時代思潮――
   第4節 その後のUCC とリステイトメント
   第5節 世界の中のUCC・リステイトメント
   第6節 むすびに代えて

  2 A Comparative Study of the Basic Concept of Impossibility of Contract Performance Under Japanese, American and Uniform Law
   Introduction
   I.  Overview of Impossibility Doctrine in American Contract Law
   II. Japanese Law
   III. Uniform Laws on Contract
   IV. Problems in the Interpretation of Article 79
   Conclusion

  3 The Right to Self-Determination Regarding Property Right in Japanese Civil Law
   I. Introduction
   II. Types of the Right to Self-Determination in Japan
   III. The Right to Self-Determination in Private Law
   IV.  The Possibility of Remedies for the Infringement of the Right to Self-Determination in the Economic Interest
   V. Conclusion

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