日本の各地に、妙見山や妙見川、妙見町、妙見道などと呼ばれるところが存在している。みな妙見神が祭祀されていたために、その名称がある。またこういったところには、だいたい妙見神社や妙見寺などが存在している。しかし妙見神については、どういう神なのか、いまはあまり知られていない。明治の神仏分離により、妙見神の祭祀は、天御中主神に置きかえられてしまった。そのために神格についてはますます分からなくなっている。妙見神は、もともとは密教系の神であった。そのために妙見菩薩と称されることもある。ところが、のちに道教の影響を受けて、真武神、すなわち玄天上帝の姿に変容してしまう。この真武神の姿に変わってしまった妙見神を、真武型妙見と呼ぶ。真武型妙見の特色としては、亀と蛇に乗る姿で示されるということがある。本書の目的は、日本の神社や寺院において祀られる妙見神が、どれくらいの割合で真武型妙見に変化しているのかを調査することである。九州の八代妙見、足立妙見、近畿の能勢妙見、京都十二支妙見、関東の千葉妙見、秩父妙見、東北の相馬妙見など、著名な妙見神の祭祀を中心としつつ、日本全国に存在する妙見神について現地調査を行う。また山口においては大名の大内氏の影響により、特に妙見神が重視されることになった。下松における妙見祭祀は、その一端を示すものである。四国にも妙見神の信仰があり、これについても調査を行った。特に日蓮宗においては妙見菩薩を重視することから、寺院に妙見宮が併設されることが多い。こちらは神社とは異なり、妙見神がそのまま祀られている。また、妙見神に深く関わるものとしては、鎮宅霊符の信仰がある。かつて日本全国において、この鎮宅霊符は大流行した。ただ、日本では鎮宅霊符と妙見神は、あるときは同一視され、あるときは別の神であるとされた。これについても、奈良や大阪の事例を取りあげて論じた。これについては、大阪の星田妙見も重要な地位を占めている。この現在ではあまり注意されなくなった鎮宅霊符の信仰についても調査する。さらに妙見神に関連するものとして、水天信仰や星神信仰もある。これらの信仰についても、妙見神に密接な関係を持つものとして調べた。本書の性格は、研究書というよりも、調査報告に類するものであると考えるが、調査の結果、真武型妙見の信仰がどのように広がっているかについては、ある程度の回答を示すことができたと考える。