私は,2020年のことし米寿です。この資本主義社会では,昔から,庶民が歳をとると貧乏になるのは世の常といえるですが,私もその例にもれません。私も,まずしい国民の一人として,生活保障の国家的政策装置であってほしい社会保障に強い関心をもっているのですが,今日の社会保障は,逆に経済のグローバル化と財政危機のもとでの自民党による国家権力の支配によって改悪の一途をたどり,差別と収奪の手段としても悪用されているのです。たとえば国保と健康保険の差別や国保税の強制押収,医療保険と介護保険などへの3割負担の拡張や,生活保護基準をさえ下まわる基礎年金までも一律に引き下げるマクロ経済スライドなど,枚挙のいとまがありません。
ただし,日本の政府だけでなく,多くの主要国がグローバリゼーションとネオ自由主義に加担して各国民の生存権を保障する福祉国家としての働きを弱め,その存在意義を疑われる事態に直面しているのです。アメリカ政府のコロナへの対応がその典型です。本書は,こういう新たな局面への対応を視野にいれながら,グローバル化のもとでの福祉国家のあり方について,基本問題と若干の改革課題を再考察しようとするものです。(本書 「はじめに」より)