怪奇幻想小説から傑作を選りすぐり、ホラー愛好者に贈るナイトランド叢書。
日本作家レーベルJAの第一弾!
海外が先に見出した異才、間瀬純子。
待望の作品集!
〜歪み真珠のごとく、絢爛豪奢にして、グロテスクな美学〜
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食堂と外を区切る扉が開くと、子供たち全員がすくみあがった。ヴァイオリンも止む。
お父さんが帰ってきたのだ。金色の無精ひげを生やしたお父さんは、ワイシャツのボタンをいくつもはずした、だらしない格好をしている。お父さんにそんなことを言った子がいて、刺の生えた鉄を食べさせられ殺された。
お父さんは手を挙げ、朗々とした声で子供たちとお母さんたちに呼びかけた。
「今日は新しいお父さんを連れてきたぞ」
お父さんはその人の肩を抱き寄せ、戸口の正面に引っ張り出す。お父さんともつれあうようにして、黒い髪で浅黒い肌の、怖い目つきの男の人が現れた。ハンサムなのかもしれない。けれど黒い髪の人は、生まれながらに罪深い、劣った人たちだとお父さんはいつも言っていたのに。
「新しいお父さんの子供たちだ」
いっせいに、黒い髪の、黒い服を着た子供たちが何十人も駆けこんできて、みっつの食卓の檻に手当たり次第にもぐり、残った皿を取って舐め始めた。
ジャンニがわたしの顔を覗く。「ジニ、俺たちももう最後の食卓に行かなくちゃ」
わたしはもう何も食べる気がしなかった。
――「死の谷」より
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間瀬純子作品のどれもが、
家族・血脈・過去・歴史の影が侵食していく
現在に喘ぐ者を描きながら――
その文章が、描き方が、あまりにあざやかだ。
同時に、それまで書かれたあらゆる
幻想文学、ポストモダン文学、SFとも趣を異にしている。
オルタナティヴ・ファンタスティカとでも
呼ぶべきかもしれない。
――井上雅彦
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ホラーと現代文学が
最先端において融合した短篇を読みたい――
あなたにそんな希望があるなら、
まさに本書こそがその答えになるだろう。
――岡和田晃
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間瀬純子の作品は、極私的にして幻想性に富み、
忘れ難い衝撃をもたらした。
ミルフィーユのように、読む者の脳内に
快楽物質さえ分泌させるような恐怖と苦痛が
何層にも積み重なる形で精巧に作り上げられている。
――シャーニ・ウィルソン(「死の谷」英訳者)
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間瀬純子は、リアリズムを超克し、文体を磨き、
イメージの強度を高め、凝集性のある短篇を世に送り出した。
そして、歪み真珠のごとき絢爛豪奢にしてグロテスク、
暗黒の美学を感じさせる文飾が無二の世界を構築し、
苦みのある愉悦を読者へともたらすことに成功した。
――岡和田晃