世界史の中のフェートン号事件

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世界史の中のフェートン号事件

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著者より
「本書は、文化五年(一八〇八)に長崎で起きたフェートン号事件を、従来の「鎖国下の一異変」「地方史的事件」という枠を越えて、ナポレオン戦争、アヘン貿易、ロシア南下政策という当時の国際秩序の変動の中に位置づけ直し、日・蘭・英三国の一次史料を突き合わせて総合的に検証したものです。

従来この事件は日本側史料のみ或いはオランダ側史料のみから、部分的に論じられることが多く三国の同時代一次史料を用いた比較研究は殆ど行われてきませんでした。

本書では、
・オランダ商館長ドゥーフの日記(『ドゥーフの秘密日記』)、
・英国公文書館蔵のフェートン号航海日誌および艦長報告書、
・長崎奉行所関係史料(崎陽日録・絵図・老中指示文書等)
を用いて、事件の経緯、来航の真の目的、奉行切腹の背景、事件後の幕府・諸藩の対応を再検証しました。

その結果、次のようなことが史料で裏付けられました
・フェートン号来航は偶発的行動ではなく、当時のイギリス東アジア戦略の一環であった可能性があること。
・松平奉行の切腹は単なる「失政」の責任論では説明できず、威嚇文書と幕府内部の意思決定構造が大きく影響していたこと。
・事件後の警備強化が制度としては定着せず、再び形骸化していった。

 また本書では、危機対応における「情報の不足」「想定外への弱さ」「責任の所在の曖昧さ」という問題が、二百年前だけでなく現代日本にも通じる構造であることにも注意を向けています。単なる歴史叙述ではなく、組織論・危機管理論としても読める構成を意識しました。
大井 昇 拝」
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