なぜ、このまちにはこんな風景が残っていたのか――。
何気ない疑問をたどると、戦争、高度経済成長、そして地域の記憶へとつながっていく。
本書は、年表を追う従来の郷土史ではなく、「身近な不思議」を手がかりに、思い出の風景の源流と変遷をたどる新しいスタイルの地域史である。
舞台は、筆者が生まれ育った武蔵野市とその周辺。時代は、戦後十年を経て高度経済成長へと向かう頃である。戦時中の痕跡、急速に姿を変えたまち並み、鉄道や工場、商店街など、武蔵野・三鷹地域に残された数々の謎や記憶をたどっていく。
調べていくうちに、一つの疑問は別の疑問へとつながり、点在していた出来事が時代背景や地域特性によって結びついていく。その過程は、ふるさとを舞台にした謎解きのようでもあり、自分自身が主役となって地域の奥深さを再発見する知的な冒険でもある。
さらに、調査を通じて地域の人々との世代を超えた新たな交流が生まれ、成果を発表する機会につながることも、このスタイルの郷土史研究の大きな魅力といえる。
本書は武蔵野・三鷹地域を題材としているが、その視点と方法はどの地域にも応用できる。あなたの身近な風景にも、まだ気づいていない「ふるさとの謎」が眠っているかもしれない。本書が、新たなふるさと再発見の旅への第一歩となれば幸いである。