身近にいる(だろう)在日朝鮮女性の姿は今日では十人十色どころか百人百色で決して一様ではない。
既婚者の場合、配偶者が日本人というケースが多数を占める現状にある。かつて在日朝鮮人は60万人といわれたが、ポジティブに捉えたら在日朝鮮人にかかわりを持つ人々が増えていることになる。しかし関係性をポジティブにするためには、直接、間接の経験、その記憶の破片をジグソーパズルのようにつなぎ合わせる作業が必要である。破片が磨滅したり、消えてしまう前に、当事者のみならず、関係者の記憶の歴史的意味を知る必要があろう。この歴史的意味を知るために、植民地主義という認識枠を用いたい。「民族」に関わることを強烈に記憶するのも、記憶を疎むのも植民地主義のなせるわざである。
在日朝鮮女性が個別に経験した家父長制や性差別と植民地主義との関係性、それらがどこまで普遍性をもち、分ちあえるものなのか?